・収容令書による仮放免(入国管理局により身柄を収容された場合)
・出頭申告による仮放免(在留特別許可等を願い出て出頭申告した場合)
・退去強制令書による(退去強制令書が発付されてからの仮放免許可)
オーバーステイ(不法滞在)容疑で収容された場合、原則として60日以内に退去強
制などの処分が確定します。 ただし、退去強制令書による仮放免許可のように、
退去強制令書が発付された場合でも、一定の条件を満たし、かつ特別な事情がある
と判断されれば、例外的に一時的な仮放免が許可される場合があります。 実際、
仮放免許可の流れと在留特別許可(退去強制手続きの流れ)は全く独立した別建て
の手続きですが、在留特別許可の可能性が高まれば、仮放免許可されるというケー
スを多々見てきたこともあり、仮放免許可申請をすることを強くお勧めします。
ただ、仮放免許可申請は申請のタイミングや申請の理由等、重要なポイントがいく
つかあり、それを誤ると許可されるべき事案で不許可になったりすることがありま
す。
仮放免根拠法令
出入国管理及び難民認定法第54条第2項
入国者収容所長又は主任審査官は、前項の請求により又は職権で、法務省令で定めるところにより、収容令書又は退去強制令書の発付 を受けて収容されている者の情状及び仮放免の請求の理由となる証拠並びにその者の性格、資産等を考慮して、300万円を超えない範囲内で法務省令の定める額の保証金を納付させ、かつ、住所及び行動範囲の制限、呼出しに対する出頭の義務その他必要と認める条件を付して、その者を仮放免することができる。
仮放免取扱要領第9条
入国者収容所長又は主任審査官は、仮放免許可申請書並びに第6条及び第7条に規定する書類の提出又は送付を受けたときは、被収容者の容疑事実又は退去強制事由及び前条に定める入国審査官等の意見のほか、次の点を勘案し、仮放免を許可することができる。
(2)被収容者の性格、年齢、資産、素行及び健康状態
(3)被収容者の家族状況
(4)被収容者の収容期間
(5)身元保証人となるべき者の年齢、職業、収入、資産、素行、被収容者との関係 及び引受け熱意
(6)逃亡し、又は仮放免に付す条件に違反するおそれの有無
(7)日本国の利益又は公安に及ぼす影響
(8)人身取引等の被害の有無
(9)その他特別の事情
仮放免の許否判断
仮放免の許否は、仮放免請求等に基づき、個別の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案して判断されるものであり、許否に係る基準はありませんが、その許否判断に当たって考慮する事項は、出入国管理及び難民認定法第54条第2項及び仮放免取扱要領第9条において次のとおり定められています。
仮放免のQ&A
Q1:仮放免とはそもそも何ですか?
A1:簡潔に言えば、収容されている外国人の身柄を一時的に解放する処分をいいま
す。 刑事事件における保釈とは違う手続きですが、似ている点もあります。
Q2:仮放免の許可条件は何ですか?
A2:実は、仮放免許可の要件については入管法上に明確な定めはありません。
入管法54条2項は、「収容されている者の情状及び仮放免の請求の理由となる証
拠並びにその者の性格、資産等を考慮して、300万円を超えない範囲内で法務省
令によって定める額の保証金を納付させ、かつ、住居及び行動範囲の制限、呼出
しに対する出頭の義務その他必要と認める条件を付して、その者を仮放免でき
る」と規定しています。 つまりは様々な事情を総合的に判断して決めるという
ことです。 但し、一定の非公開の基準はあります。
Q3:仮放免許可申請を専門家に依頼したいと思っています。行政書士、弁護士のど
ちらに依頼するのが良いですか?
A3:できることはいずれでもほとんど変わりはありません。それより大切なのは入管
専門の申請取次行政書士であるかどうか、専門の弁護士であるかどうかという点
です。 小職の聞いた話では、資格者に依頼しているにも関わらず、その資格者
は仮放免理由書を数行書いて提出しただけで、仮放免が不許可になっている事例
があります。 プロからすると、「ありえない」話ですが、お客さんの無知に付
け込み、適当な仕事をする人もいる、ということです。 行政書士や弁護士も
様々です。 専門家は専門分野により経験や知識が人により大きく違うというこ
とを認識しておいてください。
Q4:ボランティアの方が仮放免のサポートをしてくれるようですが、頼んでもいい
でしょうか?
A4:もちろん頼むのは自由です。しかしながら、ボランティアの方は入管て手続きの
プロではなく、善意からあくまで「無料奉仕」でやっていますので、間違った
ことをされても文句はいえません。 自分や配偶者の運命がかかったこの瞬
間に、無料奉仕の素人に運命を委ねるか、百戦錬磨のプロ・申請取次行政書士
に依頼するほうがいいのかはよくお考えください。
Q5:私の彼が福岡入管に捕まってしまったようです。 仮放免許可申請の依頼を考
えています。遠方からですがご依頼できますか?
A5:はい、大丈夫です。実際、入管の収容業務を専門とする、行政書士、弁護士は少
ないのが現状です。 その上、仮放免許可申請や在留特別許可に関し、経験豊富
な行政書士、弁護士はさらに少ないのが現状です。
Q6:仮放免の際に必要になる保証金額はいくらぐらいですか?
A6:一概には言えませんが、30万円程度が多いです。
Q7:行政書士や弁護士は仮放免申請が出来ますか?
A7:はい、行政書士や弁護士は代理人として、仮放免許可申請をすることが出来ま
す。 ただし、身元保証人になることが条件です、
Q8:申請をしてから仮放免の結果が出るまでに要する時間はどれぐらいですか?
A8:仮放免の審査に要する時間は、約2週間~1ヶ月ほどです。仮放免許申請の結果
は申請書に記載した申請人宛に仮放免の結果は通知されます。 つまり行政書
士、弁護士などに依頼した時には、仮放免許可申請を受任した行政書士事務所、
弁護士事務所に通知される事になります。
Q9:自分で仮放免申請をするのが不安です。仮放免は簡単に認められますか?
A9:仮放免申請の許可を得ることは、簡単ではありません。
一般的に在留特別許可が認められる可能性が高ければ、仮放免も許可されやすい
と思っています?が決してそんなことはありません。 仮放免の許可率を上げ
るためには緻密かつ詳細な理由書を提出する必要があります。 現在の入管実
務の運用では、多くの場合、病気等の身体的事情、出頭申告をした者に認めら
れることが多いです。 一方、仮放免は不許可に終わったが、その後在留特別
許可が認められているケースもあり、たとえ仮放免が不許可に終わったとして
も在留特別許可が認められないというわけではありません。
Q10 : 過去に仮放免が許可された事例はどんなものがありますか?
A10 : まず多いのは、出頭申告された方です。 次に、退去令書発布後の取消訴訟を
提起している方です。 但し、訴訟を起こしたほうがよいかは、慎重な判断が
必要です。
Q11 :仮放免許可申請は入国管理局に外国人が収容されたら、すぐに行うものと考え
てよいのですよね? 知人が出頭して収容されました、彼には日本人配偶者が
おり現在妊娠しています。 このようなケースでは在留特別許可を受理される
可能性が高いのでは? 仮放免許可申請はまだしていないということですが。
A11 : 仮放免許可は、病気などの人道的な理由で許可されるという建前は入管のホー
ムページに記載されていますが、現状は人道的な配慮はありません。 許可さ
れるかどうかは別として、配偶者であれば一日も早く監禁された配偶者を救出
したいというの当然のことです、通常は収容当日にでも仮放免申請すべきもの
です。 しかしながら、仮放免申請の書類を入管に取りに行くと「申請するだ
け時間の無駄など」と入管職員に言われ、申請をするのを躊躇してしますま
す。 在留特別許可の可能性が高まれば、仮放免許可されるというケースは多
くありますので、すぐに仮放免許可申請をして下さい。
Q12 : 仮放免が許可された後、以前に、不法就労の事実が発覚した場合、仮放免許可
は取消されますか?
A12 : 入管の判断次第です。 仮放免許可の段階で入管当局が覚知していなかった違
法行為が、仮放免許可後に発覚した場合は、仮放免取り消しは当然あります。
ただし、現実には、不法滞在者の大部分が、不法就労を伴った不法滞在者であ
りますが、仮放免許可はされています。 このため、あらたに不法就労の経歴
が発覚した場合でも、必ず仮放免許可が取消されるとは断言できません。 仮
放免許可がそのまま続く可能性も少しはありえます。
Q13 : 母親と19才の少年がオーバースティで出頭しましたが、結果的に仮放免許可が
下りました。 本来なら収容されるところ、仮放免許可がおりましたが、なに
が理由でしょうか? 仮放免許可証を所持している場合でも警察から拘束され
ることがありますか?
A13 : まず、未成年の少年が扶養者(母)と共に仮放免されたとかんがえられます。
仮放免中でも、不法残留(法律違反)中ですので警察に入管法違反で検挙され
ることはあります。 仮放免は、刑事手続きとは別個のものなので、罰則を免
除したり、猶予する効果はありません。 仮放免許可書は常に携帯してくださ
い。 これを見せれば、拘束される可能性は低くなります。 通常は身柄を拘
束して退去強制手続きを行います。 仮放免を許可されると言うことは決して
普通のことではありません。
難民認定申請と仮滞在許可申請
1.難民認定申請
申請書類を作成し、地方入国管理局へ難民認定の申請をします。 申請者の方は
難民認定を必要とする状況についてインタビューを受けることになります。
2.仮滞在許可(※注1)
不法滞在者等の在留資格未取得外国人から難民認定申請があったときは、その
者の法的地位の安定を図るため、当該外国人が本邦に上陸した日(本邦にある間
に難民となる事由が生じた者にあっては、その事実を知った日)から6か月以内に
難民認定申請を行ったものであるとき又は難民条約上の迫害を受けるおそれのあ
った領域から直接本邦に入ったものであるときなどの一定の要件を満たす場合に
は、仮に本邦に滞在することを許可し、その間は退去強制手続が停止されます。
なお、仮滞在許可の判断は、難民認定申請者から提出のあった難民認定申請書等
の書類により行われるので、別途、仮滞在許可のための申請は必要ありません。
3.仮滞在許可による滞在
仮滞在許可を受けると一時的に退去強制手続が停止され、仮滞在期間の経過等
当該許可が終了するまでの間は、適法に本邦に滞在することができます。
・仮滞在許可書
法務大臣が仮滞在の許可をした外国人には、仮滞在許可書が交付されます。
許可を受けている間は、この許可書を常に携帯する必要があります。
仮滞在期間及び同期間の延長の書類により行いますので、別途、仮滞在許可の
ための申請は必要ありません。 仮滞在期間は、原則として3月です。 仮滞
在期間の更新申請は、許可期限の10日前から受け付けており、申請書は、各地
方入国管理局、支局及び出張所の窓口に備え付けてあります。
・仮滞在許可の条件
仮滞在許可を受けた者は、住居や行動範囲が制限されるほか、本邦における活
動についても、就労は禁止され、また、難民調査官から出頭の要請があった場
合には、指定された日時、場所に出頭して、難民認定手続へ協力する義務が課
されるなど、種々の条件が付されます。
・仮滞在の許可の取消し
仮滞在の許可を受けた者がその付された条件に違反した場合、不正に難民認定
を受ける目的で偽変造された資料を提出した場合、虚偽の陳述をした場合等に
は仮滞在の許可が取り消されることがあります。
難民認定
難民と認定されると、「定住者」の在留資格が与えられます。 また、難民と認定された人が海外へ出国する際には、パスポートの代わりとして「難民旅行証明書」の交付を受けることができます。
1.異議申立て
不認定の場合、異議申立てを行うことができます。
2.異議申立人
難民認定がされなかった外国人や、難民認定を取り消された外国人は、法務大
臣に対して異議申立てをすることができます(入管法61条の2の9)。
3.異議申立期間
原則として難民認定をしない旨の通知、または難民認定を取り消した旨の通知
を受けた日から7日以内
4.異議申立ての窓口
異議申立人の住所または現在地を管轄する入国管理局
5.異議申立てに必要な書類
①異議申立書
②異議申立の理由を立証する資料
6.法務大臣の決定
法務大臣が、異議申立てに理由がある旨の決定をし、難民と認定された外国人
には、難民認定証明書が交付されます。難民と認められた外国人が、一定の要
件を満たす場合は、定住者の在留資格が与えられます。 また、一定の要件を
満たさない場合でも、在留を特別に許可すべき事情がある場合は、特別に在留
を許可されることがあります。
7.退去強制
異議申立ても却下され、また訴訟を行った場合で敗訴したときには、退去強制
処分を受け、第三国へ出国することになります。
平成24年の難民認定申請者数
平成24年に我が国において難民認定申請を行った者は2545人であり、前年に比べ678人(約36%)増加しました。 また、難民の認定をしない処分に対して異議の申立てを行った者は1738人であり、前年に比べ19人増加し、申請数及び異議申立数いずれも、我が国に難民認定制度が発足した昭和57年以降最多となりました。 難民として認定した者は18人(うち13人は異議申立手続における認定者)、難民として認定しなかった者は、難民認定申請(一次審査)で2083人,異議申立てで790人で、難民とは認定しなかったものの、人道的な配慮が必要なものとして在留を認めた者は112人であり、両者を合わせた数(庇護数)はたったの130人でした。
難民認定申請数及び異議申立数
(1) 難民認定申請数
ア 難民認定申請を行った者(以下「申請者」という。)は2545人であり、前
年に比べ678人(約36%)増加しました。
イ 申請者の国籍は、50か国にわたり、主な国籍は、トルコ423人、ミャンマ
ー 368人、ネパール320人、パキスタン298人、スリランカ255人、バン
グラデシュ169人、インド125人、ナイジェリア118人、ガーナ104人、
カメルーン58人となっています。
ウ 申請者の申請時における在留状況は、正規在留者が1777人(申請者全体の
約70%)で,不正規在留者が768人(同約30%)となっています。
なお、不正規在留者のうち、収容令書又は退去強制令書が発付された後に
申請を行った者は586人(約76%)となっています。
エ 申請者全体の約23%に当たる573人が、過去に難民認定申請を行ったこと
があり、このうち正規在留者は279人(うち、難民認定申請中であること
を理由に付与された在留資格「特定活動」を有する者が約91%)、不正規
在留者は294人(うち、既に退去強制令書の発付を受けている者が83%)
となっています。
(2) 異議申立数
ア 難民の認定をしない処分に対して異議の申立てを行った者(以下「異議申
立者」という。)は1738人であり、前年に比べ19人増加しました。
イ 異議申立者の国籍は、47か国にわたり、主な国籍は、トルコ296人、ミャ
ンマー272人、ネパール257人、スリランカ206人、パキスタン197人、バ
ングラデシュ131人、インド77人、カメルーン62人、ナイジェリア49人、
イラン37人となっています。
処理の状況
(1) 難民認定申請(一次審査)
ア 難民認定申請の処理数は2198人であり,前年に比べ79人増加しました。そ
の内訳は、難民と認定した者(以下「認定者」という。)5人、難民と認定
しなかった者(以下「不認定者」という。)2083人、申請を取り下げた者
等110人です。
イ 不認定者の主な国籍は、ミャンマー337、トルコ334人、ネパール303人、
パキスタン247人、75スリランカ210人、バングラデシュ154人、インド
96人、ナイジェリア75人、カメルーン66人、イラン49人となっていま
す。
(2) 異議申立て
異議申立ての処理数は996人であり、前年に比べ116人(約13%)増加しまし
た。 その内訳は、異議の申立てに理由があるとされた者(認定者)13人、理
由がないとされた者(不認定者)790人、異議申立てを取り下げた者等193
人です。 なお、法務大臣は、異議申立てに対する決定に当たって、難民審査
参与員の意見を聴かなければならないとされています(出入国管理及び難民認
定法第61条の2の9)。過去に法務大臣が難民審査参与員の意見(意見が分かれ
たものについては多数意見)と異なる決定をした例はありません。
(3) 庇護数
難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めた者(以下「そ
の他の庇護者」という。)は112人です。 認定者18人にその他の庇護者112人
を加えた130人が、我が国が実質的に庇護を与えた者(庇護数)です。 なお、
認定者の国籍は、ミャンマーほか3か国で、認定者数はミャンマー15人ほか 3人
となっています。 また、庇護を与えた者の国籍は、16か国にわたり、うちミャ
ンマーが89人で全体の約68%を占めています。
(4) 仮滞在許可制度の運用状況
仮滞在許可(※注1)者は74人で、前年に比べ3人増加しました。 仮滞在の許可
可否を判断した人数は701人で、許可対象とならなかった者について、その理由
の主なものは次のとおりです。 ①本邦に上陸した日(本邦にある間に難民とな
る事由が生じた者にあっては、その事実を知った日)から6か月を経過した後に
難民認定申請をしたこと…410人、②既に退去強制令書の発付を受けていたこ
と…320人となっています(※注2)。
難民認定申請における主な申立て
(1) 認定者の主な申立て(※注3)
・本国において、反政府団体のメンバーとして反政府活動を行ったところ、本国
政府から逮捕され、尋問や拷問を受けた
・本邦において、反政府団体のメンバーとして積極的かつ継続的に反政府活動を
行っている
(2) 不認定者の主な申立て(※注3 )
・対立政党の構成員等から危害を加えられるおそれ(約19%)
・反政府団体やテロ組織,犯罪組織等から危害を加えられるおそれ(約17%)
・相続問題や借金取立て等の私人間の争いや生活苦などの個人的事情(約 17%)
・過去に難民不認定処分を受けた申請における申立てと同様の申立て(約15%)
(※注1) 「仮滞在許可」とは、不法滞在中の難民認定申請者の法的地位の安定
化を速やかに図ることを目的として、これら不法滞在者から難民認定
申請があった場合に、出入国管理及び難民認定法第61条の2の4第1項
に定める要件に該当する場合を除き、その者に仮に本邦に滞在するこ
とを許可する制度です。
(※注2) 1人の申請者について許可しなかった理由が複数ある場合は、そのすべ
てが計上されています。
(※注3) 平成24年下半期分(約1200件)について分析したものです
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