在留資格「技能実習」の実態

 「横浜のアオヤギ行政書士事務所」が在留資格「技能実習」の現在の問題点につき解説します。 ご質問やお問合せは下記のフォームに記載のうえ、メールにて送信下さい。

 

実習生の失踪

 入管局によると、実習生の失踪は平成23年から毎年増加しており、26年は過去最多の4851人が行方不明(失踪)となっています。 それらの多くは、不法残留者として、潜って生活しています。 原因の多くは、労働条件が思っていたより悪く、特に収入が低く、本国で借りた入国費用の返済が出来ないなど、お金の問題が多いようです。

 

 入管法に基づく法務省令では「行方不明者の多発」を不正行為として規定しています。 過去1年間に受け入れた実習生の失踪が一定数に達した団体・企業は、新規受け入れが3年間停止されることになっています。

 しかし、平成22~26年の5年間に受け入れが停止された団体・企業はゼロです。 さらにさかのぼっても適用事例は数件しかないとのことです。 入管局の話では、「失踪実習生から話が聞けないと、事実認定に至らない、調査に強制力もない」ので、困難との事です。

 失踪が多発しているような団体・企業の場合、賃金未払いなど他の不正行為が多発していることも多いので、別の法令違反を適用して、受け入れを止める場合があります。

 

実習生の現状

 少子高齢社会の中、企業優先の政策観点だけが前面に出ています。 国民経済的な労働市場の役割や労働条件、賃金水準を良くするというのではなく、企業活動本来の改善対策ではなく、企業の費用から見て都合のいい労働市場構造、労働条件の決定方式をつくり、外国から流入・流動している労働者も、企業活動の都合を優先する観点で国内外を一緒にした活用体制にしたいという強い願望があるのだと思います。  こんな惨状になっているにもかかわらず、安倍政権は今春、外国人技能実習制度の受け入れ期間を最長3年から5年に延長するとともに、受け入れ職種に介護職なども追加する法案を閣議決定しました。 

 

実習生の労働災害

   政府が受け入れ拡大を図る外国人技能実習生の労災事故が、2010年に労働環境に配慮し制度が見直された後も増えており、2013年度に初めて1千人を超えましたた。

 実習生の受け入れ団体や企業を指導する国際研修協力機構(JITCO)がまとめて公表しました。 JITCOが把握する労災事故は2009年度の制度導入から受け入れ拡大とともに増え、2013 度は1100人にを超えました。

 2013年度に労災事故にあった人の国籍はアジアに集中し、中国705、ベトナム156、インドネシア118、フィリピン86と続きます。 都道府県別では愛知が129と最多で、三重71、広島64、岐阜60、大阪58と続き、製造業が盛んな地域が目立ちます。

 長時間残業による実習生の過労死も出ています。 茨城県のめっき加工会社に勤めた31歳の中国人男性の過労死を、労基監督署が2010年に認定しました。 厚労省が統計を取り始めた2011年度以降の認定はありませんが、ある新聞社の取材では、岐阜県の鋳造会社で働き27歳で心疾患で急死したフィリピン人男性の認定へ手続きが進んでいます。 JITCOは受け入れ側に「日本語の理解や作業上の危険情報の不足が原因で労災が起きたケースもある」と配慮を求めていますが、それだけではないようです。 技能実習生を、日本人の若者が嫌う仕事を、低賃金単純労働者として、働かせているのが実情ではないでしょうか。