遺産分割協議書

   「横浜のアオヤギ行政書士事務所」遺産分割協議書につき解説致します。 遺産分割協議書作成の目的は、不動産や預貯金の名義変更や相続税申告への添付書類だけではなく、相続人間における分割内容の合意・確認や、法的にも分割が終了したことを明確にするといった意味合いがあり、重要な書類です。 銀行の預貯金の名義変更手続きや払戻しには、たとえ自筆証書遺言書があっても、遺産分割協議書なしでは、手続きを受付けて貰うことが出来ないのが実情です。 ご意見やご質問は下記のフォームに記載のうえ、メールにて送信下さい。 なお、返信を希望されるご質問には、貴メールアドレスの記載をお忘れなく。

 

 遺言書(自筆証書遺言公正証書遺言)があれば、遺言書の内容に従うことが原則ですが、遺言書が存在しない場合には、原則として、相続人間で遺産分割協議を行うことになります。 遺産分割協議を行うには、その前提として相続人及び相続財産の調査(相続財目録作成を行う必要があります。 これらに漏れがあった場合には遺産分割協議自体が無効になることがあります。

 相続開始後、相続財産すべてが相続人全員の共有状態になります。 従って、不動産等の相続財産をを処分するのに、いちいち全員の同意が必要となってしまいます。 そこで、個々の相続財産を誰々のものにして、自由に処分出来る状態にするのです。 これが遺産分割協議であり、共有財産から解放されるため、大きな意味を持ちます。

 また、遺言に遺言執行者の指定がない場合は、受遺者を含む相続人全員の合意があれば、遺産分割協議で、遺言と異なる遺産分割を行うことも「私的自治の原則」に従い、可能となっています。 しかし、遺言に遺言執行者が指定されている場合は、相続人全員の同意のもとに遺言内容と異なる財産処分を相続人から求められても、遺言執行者は遺言に基づいた執行をすることができます。 また、遺言執行者があるにもかかわらず、一部の相続人が遺言に反して遺産を処分しても、その行為は無効とする判例があります。

 遺産分割協は必ずしも相続人全員が集まって行う必要はありません、協議書を作成し、持ち回り方式で署名捺印してもらっても問題ありません。 

 遺産分割協議書を作成して各人が署名押印する場合、署名は可能な限り自筆(サイン)で、また押印は必ず実印(印鑑登録印)を押印します。  自筆(サイン)ができない相続人がいる場合は、遺産分割内容について本人の意思確認をした後に他人が代わって署名することも可能です。 

 

 相続が発生(被相続人の死亡)して、遺産分割協議をするにあたって具体的な分割方法と分割基準をご参考までに記載しました。 

 

 遺産分割の方法

 (1) 現物分割

         現物分割とは、被相続人の財産に不動産、株式、預貯金があった場合、長男に

   不動産、二男に株式、長女に預貯金というように現物で分配する方法です。

   相続人間で上手く分ける事が出来れば良いのですが、そうでない場合は他の方  

   法で分割せざるを得ません。

 (2)   換価分割

   (1)の現物分割が出来なかったり、被相続人の財産が不動産のみであり、相続

   人が共有することで誰が管理するかと言った争いが生じてしまい、不動産の効 

   用が落ちてしまうような場合は、不動産を売却しお金に換えて相続人間で分配

   します。

 (3)   代償分割

   (2)で記載したように相続財産が不動産のみで、長男がその不動産に住み続け     

   たい等の事情があるときは、長男が自分の相続財産分を超えて取得することに

   なった価格に相当する金額を他の相続人に分配することで、遺産分割協議

   まとめる方法です。

 

 遺産分割協議の基準

 (1)   被相続人の最終意思

      遺言書の無い場合、被相続人の最終意思を推測することは難しい面もあります 

    が、被相続人の普段の言動などがある程度分かればその内容は尊重されるべきで

        す。   また、遺言の要件を満たしませんが、被相人が記載した書面や日記など

    が存在すれば、その内容についても尊重されるべきです。

 (2)   各相続人の法定相続分

      民法上、相続人には法定相続分というのが決まっています。 これを基礎として

        各相続人の取得分を考慮することが出来ます。

 (3)   各相続人の年齢、職業、心身の状態、生活の状況

      各相続人の遺産分割協議の際の状況によっては、各相続人の法定相続分のみを

        考慮して遺産分割協議をするのは妥当だと言えません。

 

遺産分割協議書が要らない場合とは

 相続によって不動産の名義変更や預貯金の名義変更をする際には、基本的には遺産分割協議書が必要です。 しかし、下記のケースでは遺産分割協議書は不要です

1.遺言書があり、遺言書通りに相続する場合

  法律的に有効な遺言書があり、その遺言書によって誰が不動産、預貯金を相続するか指

  定されていて、遺言書通りに相続する場合。

2.法定相続人が一人の場合

  法定相続人が一人の場合は、その相続人がすべての遺産を相続することになるので不要

  です。 また、相続人のうち一人を残して、他の相続人が相続放棄をした場合も同様に

  不要です。

3.法定相続分で登記をする場合

  法定相続人が複数あって遺言が無い場合でも、法定相続分のとおりに共有名義で不動産

  の所有権移転登記する場合は、不要です。 但し、共有名義で登記した場合は、その不

  動産を処分したり、抵当権・担保権の設定には、共有名義全員手続きが必要になりま

  す。 また、法定相続人の一人から単独申請で共有名義にした場合は、登記識別情報通

  (従前の権利証に相当)は申請人にしか発行されません、すなわち他の相続人は登記

  識別情報通知を受けることが出来ません。

 

遺産分割協議書に添付する必要書類

 所有権移転登記(法務局)や預貯金の名義変更(銀行)等の時は、遺産分割協議書の提出が要求される場合には、同時に、下記の書類の提出も要求されますので、ご用意ください。
 法定相続分のとおりに相続した場合

(1) 必要な書類
 ① 登記申請書
 ② 添付書類
  (ア) 相続が発生したこと及び相続人を特定するための証明書
     具体的には、被相続人(死亡した者)の出生から死亡までの戸籍謄本、
    除籍謄本等のほか、相続人現在の戸籍謄本が必要となります。
  (イ) 相続人全員の住民票
  (ウ) 委任状(代理人が申請する場合)
 ③ 登録免許税(通常は収入印紙で納付)
(2) 登記手続について
  相続人全員で申請する必要があります(ただし、相続人の内の一人に手続を委任
  することができます。 この場合は、委任状が必要になります。)。 登記申請

  書の作成方法については、こちらをご覧ください。 登記申請書を作成し、添付   

  書類がすべてそろった後、土地・建物を管轄する登記に対して申請することに

  なります。 申請方法は、直接持参する方法、郵送する方法、オンライン申請
  する方法があります。
(3) 相続登記が長年にわたって行われていない場合
  例えば、今般、自分の父親が死亡したため、相続登記をしようとしたが、不動産
  の登記名義がお祖父さん(父親より前に死亡)のままになっていた場合は、以下 

  の確認等が必要となります。 まず、お祖父さんが死亡した時点での法定相続人

  を確認する必要があります。 お祖父さんが死亡した際、その子供である自分の

  父親が全部の相続分承継していれば、父親が死亡した時点での相続人だけを考慮

  すればすみますが、父親の外に相続人がいた場合(父親の兄弟等)は、当該相続

  人とともに相続したことになりますので(共有といいます。)、それぞれの持分

  に応じた登記を行う必要があります(相続人全員の戸籍謄本、住民票の添付)。
  なお、相続人が複数人いる場合、遺産分割協議により、特定の相続人がすべて相

  続するといった協議が行われることがよくあります。

2 遺産分割協議によって相続した場合
(1) 必要な書類
 ① 登記申請書
 ② 添付書類
  (ア) 相続が発生したこと及び相続人を特定するための証明書
     具体的には,被相続人(死亡した方)の出生から死亡までの戸籍謄本,
    除籍謄本等のほか、相続人の現在の戸籍謄本が必要となります。  また、 

    遺産分割協議書の添付が必要となります。遺産分割協議書には、申請人以外

    の他の相続人の印鑑証明書(作成後3か月以内である必要ありません。)が

    必要となります。
  (イ) 相続人全員の住民票
  (ウ) 委任状(代理人が申請する場合)
 ③ 登録免許税(通常は収入印紙で納付)
(2) 登記手続について
  前項の(2)をご覧ください。
(3) 相続登記が長年にわたって行われていない場合
  前項の(3)をご覧ください。 

 

遺産分割協議により相続不動産の所有権移転登記方法
(1) 必要書類
 ① 登記申請書

   申請書は、A4の用紙に記載し、他の添付情報と共に左とじにて提出します。 

   紙質は、長期間ほぞんすることが出来る上部なもの(上質紙等)にしなければ

   なりません。

   文字は、直接パソコンを使用して入力するか、又は黒インク、黒ボールペン、

   カーボン紙等で、はっきりと書かなければなりません。  鉛筆は使用するこ

   とが出来ません。

   郵送による申請も、可能です。 申請書を郵送する場合は、申請書をいれた封

   筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載の上、書留郵便により、送付しま

   す。

   ② 添付書類
    (ア) 相続が発生したこと及び相続人を特定するための証明書
         具体的には、被相続人(死亡した方)の出生から死亡までの戸籍謄本、除
     籍謄本等のほか、相続人となる方々の現在の戸籍謄本が必要となります。
     また、遺産分割協議書の添付が必要です。 遺産分割協議書には、申請人
     以外の他の相続人の印鑑証明書(作成後3か月以内のものであることを要  

     しません。)が必要となります。
   (イ) 相続人全員の住民票
   (ウ) 委任状(代理人が申請する場合)
 ③ 登録免許税(収入印紙で納付)
(2) 登記手続について2
  相続人全員で申請する必要があります(ただし,相続人の内の一人に手続を委任
  することが出来ますが、委任状が必要です)。
  登記申請書の作成方法については、こちらをご覧下さい。
  登記申請書を作成し、添付書類が全て揃った後、土地・建物を管轄する登記

  対して申請することになります。
  申請の方法としては、直接持参する方法、郵送する方法、オンライン申請
  する方法があります
(3) 相続登記が長年にわたって行われていない場合

   例えば、今般、自分の父親が死亡したため、相続登記をしようとしたが、不動

  産の登記名義がお祖父さん(父親より前に死亡)のままになっていた場合は、以 

  下の確認等が必要となります。
   まず、お祖父さんが死亡した時点での法定相続人を確認する必要があります。   

  お祖父さんが死亡した際、その子供である自分の父親が全部の相続分を承継して 

  いれば、父親が死亡した時点での相続人だけを考慮すればすみますが、父親の外

  に相続人がいた場合(父親の兄弟等)は、当該相続人とともに相続したことにな

  りますので(共有)、それぞれの持分に応じた登記を行う必要があります(相続 

  人全員の戸籍謄本、住民票の添付)。 

 

遺産分割協議による預貯金の所有権移転手続き

① ゆうちょ銀行の手続き

貯金、振替または国債等の名義人亡くなった場合は、「相続確認表(PDF/224KB)」に必要事項を記入し、近くのゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口(以下、営業窓口)に提出します。

 その後、貯金事務センターから相続手続きについての案内書が送られます 。その案内に基づいて各種請求書、必要書類等を準備し、原則として最初に申出した営業窓口に提出します。(貯金事務センターにおいて手続がなされます。)

 ゆうちょ銀行における相続の処理が終わると、貯金事務センターから代表相続人あてに払戻しに係る証書(払戻しをされる場合)または名義書換え済みの通帳等(名義書換えの場合)を簡易書留郵便にて送られてきます。  証書は、近くの営業窓口に提出して払戻金を受け取ります。  貯金、振替または国債等の名義人が亡くなった場合は⇒「相続確認表PDF/224KB)に必要事項を記入の上、近くのゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口(以下、営業窓口)に提出します。

 その後、貯金事務センターから相続手続きについての案内書が送られてきます。 その案内に基づいて各種ご請求書、必要書類等を準備します、原則として最初に申出た営業窓口に提出します。(貯金事務センターにおいて手続きがなされます。)

ゆうちょ銀行における相続の処理が終わると、貯金事務センターから代表相続人あてに払戻しに係る証書(払戻しをされる場合)または名義書換え済みの通帳等(名義書換えの場合)が簡易書留郵便にて送付されます。  証書は、近くの営業窓口に提出して払戻金を受取ります。

② 銀行の手続き

 銀行では、預金等の相続にあたり、次のような書類の提出を要求されることが多いです。

 名義書換依頼書(銀行に備付)

 除籍謄本(被相続人)

 戸籍謄本(相続人)

 預金通帳

 印鑑証明書(相続人)

 遺産分割協議書

 相続人全員の印鑑証明書

 実際の商品のサービスの内容・取扱いは、銀行によって異なります。 詳しくは、  

 取引銀行に確認します。

 

 遺産分割協議書サンプル4点

1.標準・協議後に新に財産が発見される可能性のある場合
            遺産分割協議書

被相続人        行政一郎
戸籍              横浜市中区本牧1-1
生年月日        昭和○○年○月○日
死亡年月日     平成○○年○月○日

 上記の者が死亡した事により開始した遺産相続の共同相続人である行政二郎、 行政三子は相続財産に
ついて次の通り遺産分割の協議を行い、下記の通り分割し取得する事に合意した。
1. 下記不動産は行政二郎が取得する。(登記簿に記載通りに明記する)
  1)横浜市中区本牧1-1 宅地100平方メートル

  2)同所所在家屋 木造瓦葺2階建

2.下記銀行預金は行政三子が取得する。(特定できるように具体的に明記する)
  1)みずほ銀行横浜支店 定期預金(口座番号〇〇〇〇〇)                 1000万円
  2)三菱東京UFJ銀行横浜支店 普通預金(口座番号〇〇〇〇〇)             500万円
3.本協議書に記載なき資産及び後日判明した遺産については相続人渋谷一郎がこれを取得する。(又は
新たに被相続人の遺産が確認された場合は改めて相続人間で協議、分割を行うものとする。)
 上記の協議を証するため、本協議書を2通作成して、それぞれに署名、押印し、 各自1通保有するものとする。 

平成27年3月2日

                              住所      横浜市中区本牧1-1
                              生年月日   昭和○○年○月○日
                              相続人    (長男)行政二郎
  (実印)
                                  行政二郎 (署名)

                              住所      横浜市中区本牧2-2
                              生年月日   昭和○○年○月○日
                              相続人    (長女)行政三子
  (実印)
                                  行政三子 (署名)

 

2.未成年者が相続人にいる場合(特別代理人の選任)
            遺産分割協議書

被相続人           行政一郎
戸籍                  横浜市中区本牧1-1
生年月日           昭和○○年○月○日
死亡年月日        平成○○年○月○日
 上記の者が死亡した事により開始した遺産相続の共同相続人である行政二郎郎、行政三子、行政四朗の特別代理人青柳保廣は相続財産に
ついて次の通り遺産分割の協議を行い、下記の通り分割し取得する事に合意した。
 1. 下記不動産は行政二郎が取得する。(登記簿に記載通りに明記する)
    1)横浜市中区本牧1-1 宅地100平方メートル
    2)同所所在家屋 木造瓦葺2階建
  2.下記銀行預金は行政三子が取得する。
    1)みずほ銀行横浜支店 定期預金(口座番号○○○○)   3000万円
  3.下記銀行預金は行政四朗が取得する。
    1)三菱東京UFJ横浜支店 普通預金(口座番号〇〇〇〇)           2000万円

 上記の協議を証するため、本協議書を3通作成して、それぞれに署名、押印し、 各自1通保有するものとする。 
平成27年3月2日

                              住所          横浜市中区本牧1-1
                              生年月日      昭和○○年○月○日
                              相続人         (長男)行政二郎
  (実印)
                                  行政二郎(署名) 

                              住所          横浜市中区本牧2-2
                              生年月日      昭和○○年○月○日
                              相続人         (長女)行政三
  (実印)
                                  行政三子(署名)
                              相続人行政四郎の特別代理人

                                  青柳保廣(署名・実印)


3.代償分割のある場合

             遺産分割協議書

被相続人        行政一郎
戸籍              横浜市中区本牧1-1
生年月日        昭和○○年○月○日
死亡年月日     平成○○年○月○日
 上記の者が死亡した事により開始した遺産相続の共同相続人である行政二郎、 行政三子は相続財産に
ついて次の通り遺産分割の協議を行い、下記の通り分割し取得する事に合意した。
  1. 下記不動産は行政二郎が取得する。(登記簿に記載通りに明記する)
    1)横浜市中区本牧1-1 宅地100平方メートル
    2)同所所在家屋 木造瓦葺2階建
  2.下記銀行預金は行政三子が取得する。(特定できるように具体的に明記する)
    1)みずほ銀行横浜支店 定期預金(口座番号〇〇〇〇〇)            1000万円
    2)三菱東京UFJ銀行横浜支店 普通預金(口座番号〇〇〇〇〇)             500万円
  3.相続人行政二郎は第一項の遺産を取得する代償として行政三子に対し金3000万円を 

    平成〇年〇月〇日までに支払うものとする。
  上記の協議を証するため、本協議書を2通作成して、それぞれに署名、押印し、 各自1通保有するものとする。

平成27年3月2日
                                 住所      横浜市中区本牧1-1
                                 生年月日   昭和○○年○月○日
                                 相続人    (長男)行政二郎
  (実印)
                                          行政二郎(署名)

                                 住所      横浜市中区本牧2-2
                                 生年月日   昭和○○年○月○日
                                 相続人    (長女)行政三
 (実印)
                                           行政三子(署名)

 

4.債務がある場合のサンプル
            遺産分割協議書

被相続人        行政一郎
戸籍              横浜市中区本牧1-1
生年月日        昭和○○年○月○日
死亡年月日     平成○○年○月○日
 上記の者が死亡した事により開始した遺産相続の共同相続人である行政二郎、 行政三子は相続財産に
ついて次の通り遺産分割の協議を行い、下記の通り分割し取得する事に合意した。
 1. 下記不動産は行政二郎が取得する。(登記簿に記載通りに明記する)
   1)横浜市中区本牧1-1 宅地100平方メートル

   2)同所所在家屋 木造瓦葺2階建
 2.下記銀行預金は行政三子が取得する。(特定できるように具体的に明記する)
   1)みずほ銀行横浜支店 定期預金(口座番号〇〇〇〇〇)            1000万円
   2)三菱東京UFJ銀行横浜支店 普通預金(口座番号〇〇〇〇〇)             500万円
 3.横浜信金本牧支店からの借入金(相続開始日の残高300万円)は相続人行政二郎が負担するものと
する。
 上記の協議を証するため、本協議書を2通作成して、それぞれに署名、押印し、 各自1通保有するものとする。 

平成27年3月2日
                                 住所      横浜市中区本牧1-1
                                 生年月日   昭和○○年○月○日
                                 相続人    (長男)行政二郎
  (実印)
                                          行政二郎(署名)
                                 住所      横浜市中区本牧2-2
                                 生年月日   昭和○○年○月○日
                                 相続人    (長女)行政三
 (実印)
                                          行政三子(署名)

 

停止条件付遺産分割協議の成否、効力についての判例

東京地方裁判所平成15年3月6日 判決
被告は、原告らが本件同意書に署名捺印した平成11年12月8日の時点において、被相続人の死亡を停止条件とした遺産分割協議が成立したと主張する。
 確かに、原告らが本件同意書に署名捺印していることからすると、同年12月8日、原告らと被告との間でA及びBの相続財産に関する合意が成立したものと認められるが、そもそも遺産分割協議の対象となる相続財産の有無及びその範囲は、相続開始時において定まるものであって、仮に相続債務が存在した場合には、遺産分割協議において相続財産を取得しなかった者も債権者との関係においては債務を免れるものではないことからすると、相続人による遺産分割協議は相続開始後に行われること が当然の前提とされており、その限りにおいて効力を有するものと解すべきであり、そして、民法915条1項は、相続の承認・放棄をなすべき期間を、相続人が、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内とし、相続放棄の申述を家庭裁判所に対して行うことを求めていることや(同法938条)、同法1043条1項が、相続開始前の遺留分の放棄については家庭裁判所の許可にかからしめていることなどに照らしても、相続開始前の遺産分割協議書は効力を有しなものと解さざるを得ない。

東京地方裁判所平成17年12月15日判決

  遺産分割は、共同相続した遺産を各相続人に分割する手続であって、遺産及び相続人の範囲は、相続の開始によって初めて確定するものであり、相続開始後における各相続人の合意によって成立した協議でなければ効力を生じないものと解すべきである。民法909条は、遺産分割協議の遡及効を定めるが、これは相続開始後に遺産分割協議が行われることを前提にしたものであり、また、相続放棄が相続の開始時点における相続人の真意に基づいてなされるべきである(一定期間に家庭裁 判所に申述する必要がある。民法915条1項。)のと同様、相続開始前の処分行為は無効だからである。このことは、遺留分の放棄についてのみ、家庭裁判所の許可を 要件として有効とする規定(同法1043条1項)の存することからも明らかである。
そうすると、被告補助参加人の主張は(これを被相続人の生前にした原告らの相続放棄の約束と解しても)、抗弁には該当しない。

東京地方裁判所平成15年3月6日判決
 本件同意書の文言を見る限り、本件同意書は原告らが相続を放棄する旨記したものと解するのが相当であり、民法915条、938条に照らすと、相続開始前における推定相続人の相続放棄の意思表示は無効と解さざるを得ないから、本件同意書も無効である。 よって、原告らの請求には理由があるから、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所平成6年11月25日判決

 遺産分割は、共同相続した遺産を各相続人に分割するものであり、 相続人及び遺産の範囲は、相続の開始によって初めて確定するのであ るから、その協議についても、相続開始後における各相続人の合意に よって成立したものでなければ効力を生じないというべきである。
 相続放棄は、相続開始後一定期間内に家庭裁判所に対する申述によってされなければならず(民法915条1項)、また、相続開始前におけ る遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限りその効力を 生ずるものであって(同法1043条1項)、これら相続に関する権利の相続開始前の処分が認められないのと同様、遺産分割についても、 事前に協議が成立したからといって、直ちに何ら効力を生じるものと解することはできない。
民法907条1項は、いつでも共同相続人の 協議で遺産の分割をすることができる旨定めているが、相続開始前の 分割協議の効力を認めたものとは解されない。民法909条は、遺産 の分割は相続開始の時に遡って効力を生ずる旨定めており、これは、 相続開始後に遺産分割協議がされるべきことを当然のこととした規定 というべきである。

東京高裁昭和54年1月24日決定
 相手方が被相続人Aの生前、前記遺留分放棄許可の申立をした際に、被相続人Aの相続をする意思のないことを表明したことは前記のとおりである。
しかしながら、相続開始前の相続放棄は法律上なんらの効力も有しないのであるから、遺留分放棄許可申立の際における相手方の相続放棄の意思表明は法 律的効力を有しない。単なる遺留分放棄の縁由にすぎないものというほかない。
そして、被相続人Aが遺言もしくは生前処分をするこ とにより相手方に事実上遺産の相続をさせないことができたのにAがこれをしない(なお、本件においてはAが遺言もしくは生前処分 をしなかつたことについて相手方の干渉、介人等の妨害があつたとの事情は認められない。)ままで、死亡し、本件相続が開始した以上、相続開始前に相手方のした遺留分の放棄はなんらの法的効果をも生じないものであるから、相手方が自己の相続権を主張するのに なんら妨げがないというべきである。したがつて、相手方が相続権を主張することは正当な権利行使であつて、それが権利濫用に当り、 もしくは信義則に反するとの抗告人らの主張は到底採用できない。

東京家庭裁判所昭和52年9月8日審判
 共同相続人の一人が、被相続人の生前に相続放棄の意思を表示したとしても、生前の相続放棄について規定を設けていない現行法のもとでは、その効力を否定せざるを得ない。

横浜地方裁判所川崎支部昭和44年12月5日判決
 右贈与契約のうち、将来相続すべき物件に関する相続を停止条件とする贈与契約は、相続開始前における事前の相続放棄もしくは事前の遣産分割協議を認めるのと同じ結果をもたらすものである。いうまでもなく、遺産の範囲は相続の開始により初めて確定するのであつて、その相続放棄や分割協議の意思表示は、そのとき以後における各相続人の意思によりなさるべきものであるから、当事者間で事前にこれらの意思表示をなすも何らの効力を生じないものといわなければならない。このこと は、吾が民法が、相続放棄は相続開始後一定期間内に、家庭裁判所に対する申述によりなさるべきことを定め(民法第915条第1項)、また、相続開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずると定めている(同法第1043条第1項)ことによつても明らかである。
そうだとすれば、前記相続人間における相続を停止条件とする贈与契約は、右相続制度の趣旨に反するものであつて無効といわざるを得ない。従つて、松男の所有に属し、被告宏らのためにまだ相続の開始していなかつた別紙目録第二(イ)の農地及び同目録第三(イ)の建物についての相続を停止条件とする持分の贈与契約は、他の争点の判断を待つまでもなく 無効といわなければならない。

 

遺産分割審判等に対する即時抗告2週間の決定

主文:原決定を破棄する。

 本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理由:抗告代理人飯田正剛の抗告理由について 

1 記録によれば、本件の経緯の概要は、次のとおりである。 原々審は、平成14年3月27日、共同相続人である抗告人及び相手方らを当事者とする遺産の分割及び寄与分を定める申立てについての審判(以下「本件審判」という。)をした。 本件審判は同年4月2日に抗告人に告知されたが、本件審判の当事者全員への告知が完了したのは同月8日であった。 抗告人は、同月22日に本件審判に対する即時抗告(以下「本件即時抗告」という。)をした。 

2 原審は、次のとおり判示して、本件即時抗告を却下した。 

(1) 本件即時抗告は、抗告人が本件審判の告知を受けた日から2週間の即時抗告期間を経過した後にされたことが明らかであるから、不適法なものというべきである。 共同相続人に対し最後に審判の告知がされた日から全員について即時抗告期間が進行する旨の抗告人の主張を採用することはできない。 

(2) 本件において、即時抗告期間の徒過が抗告人の責めに帰することのできない事由によるものであったと認めることはできないから、訴訟行為の追完が認められるべきであるとする抗告人の主張にも理由がない。 

3 しかしながら、原審の判断のうち上記2(1)は是認することができるが、同(2)は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 

(1) 相続人は、遺産の分割の審判に対して即時抗告をすることができ、その期間は、相続人が当該審判の告知を受けた日から2週間と定められている(家事審判法14条、家事審判規則17条、111条)。相続人は、各自が単独で即時抗告をすることができるが、遺産の分割の審判は、相続人の全員について合一にのみ確定すべきものであるから、相続人の1人がした即時抗告の効果は、他の相続人にも及ぶものであり、相続人ごとに審判の告知を受けた日が異なるときは、そのうちの最も遅い日から2週間が経過するまでの間は、当該審判は確定しないものと解される。そして、遺産の分割の審判の合一確定のためには、当該審判の確定について上記のように解すれば足りること、各相続人は、それぞれ告知を受けることによって当該審判の内容を了知し、各自の即時抗告期間内において即時抗告をするかどうかの判断をすることができること等にかんがみると、各相続人への審判の告知の日が異なる場合における遺産の分割の審判に対する即時抗告期間については、相続人ごとに各自が審判の告知を受けた日から進行すると解するのが相当である。そうすると、相続人は、自らが審判の告知を受けた日から2週間を経過したときは、もはや即時抗告をすることは許されないというべきである。 また、寄与分を定める審判に対する即時抗告(家事審判規則103条の5)についても、上記遺産の分割の審判に対する即時抗告の場合と同様に解すべきである。 以上と同旨の原審の前記2(1)の判断は、正当として是認することができる。この点に関する論旨は採用することができない。 

(2) 相続人ごとに審判の告知の日が異なる場合における遺産の分割の審判等に対する即時抗告期間については、上記のとおりに解すべきものであるから、本件即時抗告は、即時抗告期間が経過した後にされたものであることは明らかである。 しかしながら、この場合における即時抗告期間に関しては、先例となるべき当裁判所の判例はなく、記録によれば、家庭裁判所における実務においては、告知を受けた日のうち最も遅い日から全員について一律に進行すると解する見解及びこれに基づく取扱いも相当広く行われており、本件においても、抗告人が本件審判の告知の日がいつであるかを原々審に問い合わせた際に、担当の裁判所書記官は、平成14年44月8日に相続人全員に対する告知が完了した旨の上記の実務上の取扱いを前提とする趣旨の回答をしていること、抗告人は、この回答に基づき、その日から2週間以内である同月22日に本件即時抗告をしたことが認められる。本件におけるこれらの事情を考慮すると、抗告人は、その責めに帰することのできない事由により即時抗告期間を遵守することができなかったものと認めるのが相当であり、本件即時抗告が即時抗告期間を徒過した不適法なものとみることはできないというべきである(家事審判法7条、非訟事件手続法22条前段)。 したがって、これと異なる原審の前記2(2)の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。 論旨はこの趣旨をいう限度で理由がある。 

4 以上によれば、その余の抗告理由について判断するまでもなく、原決定は破棄を免れない。そして、本件即時抗告につき更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。