無国籍の日本人一万人以上!

 「横浜のアオヤギ行政書士事務所」が一昨日NHKで放映されました無国籍の日本人の子ども達につき、解説いたします。 ご質問は下記のフォームに記載のうえ、メールにて送信下さい。

 いろいろな事情で、出生時に出生届けが提出出来ていない人が多く存在していることが、解っています。 その無国籍の人たちを救うには、戸籍を付与しなければ解決しません。 しかし、出生証明書が無い人も多く存在するので、対応には、新立法の成立が不可欠です。

 無国籍の子供が入学時期になると問題が表面化することになります。 戸籍がないということは同時に住民票がないから行政の網から完全に外れてしまって教育を受ける権利すらありません。 しかし、義務教育は地方自治体の権限なので、自治体と掛け合って義務教育までは受けることは何とかできます。 しかし、高等学校や大学には、無国籍者は、入学できません。
 運転免許証が取れない、パスポートが取れない、銀行口座を開けない、携帯の契約ができない、保険に入れない、資格が取れないなど、出来ない尽くしであるため、生きていくのは、困難を極めます。

 

 もともと戸籍制度というのは、家を中心とした家族制度で、その家長のもとに秩序を維持しようとした古い制度です。 結婚すれば主婦は家長の支配下に入り、その子供は、自動的に家長の子供になるという制度といえます。
 従って、昨今のような離婚が多くなったり、事実婚が増えたり、DV離婚の状況下では、現実に沿わない制度となってきています。
 裁判による救済制度がありますが、実際には裁判を起こすには、面倒なことが多く、殆ど機能していません。

 

 

無戸籍者 

 無戸籍者とは戸籍のない人のことです。  現在、戸籍制度が実質的に機能している国は日本のみと判断されます。 戸籍法第49条及び第52条(⇓条文参照)に、生まれた人間は必ず出生届を出して戸籍が作成されることになっていますが何かの事情によって親等が出生届の手続きをしなかった場合に無戸籍者になります。 

 一方、無戸籍者が保護された場合には、自治体の首長の判断で当該者の戸籍の作成ができることになっています。 従って、例え、捨て子であっても無戸籍者にはなりません(↓戸籍法57条参照)。 

 

無戸籍無国籍は全く異なったものです。  例え、無戸籍であっても、出生時に日本国籍の取得条件を満たしている者は自動的に日本国籍を取得しますが、公職選挙法附則第2項及び地方自治法第20条によって、「戸籍法の適用を受けない者の選挙権及び被選挙権は当分の間停止されている」と規定されているために、無戸籍者は日本国籍を有していても参政権を行使できません。

 

無戸籍の人を支援する団体によれば、全国に少なくとも一万人の無戸籍者がいると推計しています。 その背景には、DVや離婚の増加があると考えられています。 夫の暴力から逃げだし、居場所を知られるのを恐れて、離婚もできずに時間が経過し、新たなパートナーとの間に子供が生まれた場合、民法772条(↓条文参照)は「夫の子」と推定されて、夫の戸籍に入ることになります。 そのため、母親が出生届けを提出せず、子供が無戸籍になってしまうことになります。 実の父親の戸籍には入れるには、家庭裁判所での手続きが必要ですが、前夫が関与するのを恐れて、断念する人が殆どです。


戸籍法第49条

 出生の届出は、14日以内(国外で出生があつたときは、3箇月以内)にこれをしなければ

 ならない。

2 届書には、次の事項を記載しなければならない。

  ①子の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別

  ②出生の年月日時分及び場所

  ③父母の氏名及び本籍、父又は母が外国人であるときは、その氏名及び国籍

  ④その他法務省令で定める事項

3 医師、助産師又はその他の者が出産に立ち会つた場合には、医師、助産師、その他の者の

  順序に従つてそのうちの1人が法務省令・厚生労働省令の定めるところによつて作成する

    出生証明書を届書に添付しなければならない。ただし、やむを得ない事由があるときは、

    この限りでない。

 

戸籍法第52条

  嫡出子出生の届出は、父又は母がこれをし、子の出生前に父母が離婚をした場合には、母

    がこれをしなければならない。

2 嫡出でない子の出生の届出は、母がこれをしなければならない。

 前2項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合には、左の者

      は、その順序に従つて、届出をしなければならない。

   第1同居者

   第2出産に立ち会つた医師、助産師又はその他の者

 4 第1項又は第2項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合に

       は、その者以外の法定代理人も、届出をすることができる。

 

戸籍法第57条 棄児を発見した者又は棄児発見の申告を受けた警察官は、24時間以内にその
  旨を市町村長に申し出なければならない。

 前項の申出があつたときは、市町村長は、氏名をつけ、本籍を定め、且つ、附属品、発
  見の場所、年月日時その他の状況並びに氏名、男女の別、出生の推定年月日及び本籍を
  調書に記載しなければならない。その調書は、これを届書とみなす。 

行旅死亡人の氏名と本籍
 棄児が発見された場合、発見の報告を受けた市町村長は戸籍法第57に基づき氏名と本籍を与えることとされるが、遺体にて発見された場合も同様の措置が取られ戸籍法第58条に基づく)、その事実並びに与えられた氏名と本籍が行旅死亡人の公告中に記載されることがあります。

 

民法772条(嫡出の推定)

 1.妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

 2.婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300

       以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。