「横浜のアオヤギ行政書士事務所」が不正競争防止法につき、解説いたします。
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ベネッセコーポレーションの外部業者の派遣社員による名簿漏洩事件が、不正競争防止法違反の「営業秘密に当たる顧客情報を流出」の罪で、ベネッセが告訴状を提出し、捜査されているとの情報を得ました。 今回の情報漏えいは、個人情報保護法違反にも該当しますので、両方の罪が課せられることになると思います。
不正競争防止法とは、公正な競争と国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止を目的として設けられた法律ことです。
条文上は、その第1条(目的)に「この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」と規定されています。
不正競争の類型
第二条に定義される「不正競争」は、たとえば以下のように類型化される。
商品等表示
人の業務に係る氏名・商号・商標・標章・商品の容器もしくは包装・営業表示等のことをいます。
特定商品等表示
人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務(サービス)を表示するものをいいます。
商品等表示を使用
商品等表示を直接使用する行為のほか、その商品等表示を使用した商品の譲渡・引き渡し・譲渡や引き渡しのための展示・輸出・輸入・電気通信回線を通じた提供を含みます。
類型 |
形態 |
例 |
周知表示混同惹起 行為(第1号) |
需要者の間に広く認識されている他人の商品等表示と同一または類似の商品等表示を使用し、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為 |
「カニ道楽」と「動くカニ看板」、「札幌ラーメンどさん子」と「文字及び北海道の図形を利用した看板」、「McDonald's」と「マック」など |
著名表示冒用行為 (第2号)
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他人の著名な商品等表示と同一または類似のものを自己の商品等表示として使用する行為。ただ乗り(フリーライド)、希釈化(ダイリューション)、汚染(ポリューション)がある。 |
雑誌「VOGUE」の名称を使い、大衆向けのベルト・バッグ等のファッション関連商品を扱った例、「シャネル」の名称で飲食店を経営した行為など |
商品形態模倣行為 (第3号)
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最初に販売された日から3年以内の他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡・貸し渡し・譲渡や貸渡しのための展示・輸出・輸入を行う行為。デッド・コピー。形態の模倣には、同種の商品(または機能及び効用が同一又は類似の商品)が通常有する形態は含まれない。 |
先行商品のマイナスイオンブラシの形態を真似て商品を製造販売した行為など |
営業秘密 (第4~9号)
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企業の内部において、秘密として管理されている(秘匿性)製造技術上のノウハウ、顧客リスト、販売マニュアル等の有用な情報(有用性)であって、公然と知られていない(非公知性)ものを違法な手段で取得・使用したり他人に売却したりする行為 |
会社の秘密管理された顧客名簿を複写などして持ち出して独立・転職・転売した場合や、不正に入手されたライバル会社の営業情報や顧客リスト等を取得した場合等 |
技術的制限手段に 対する不正競争行 為(第10・11号) |
デジタルコンテンツのコピー管理技術やアクセス管理技術を無効にすることを目的とする機器やプログラムを提供する行為 |
CDに納められたゲームソフトのコピープロテクト信号を無効化してコピーされたものを利用可能にする「チップ」を提供する行為。 コピープロテクト信号が記録された地上・衛星デジタル放送、CD・DVD・BDやインターネット上のストリーミング配信および音楽・映像ダウンロードサービスのプロテクトを解除する機器・ソフトウエアを提供する行為 |
不正にドメイン使用行為(第12号) |
不正の利益を得る目的または他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示と同一または類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有し、又はそのドメイン名を使用する行為 |
大手サイトと類似する紛らわしい名称で、類似のサイトを開設する行為 |
原産地等誤認惹起 行為(第13号)
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商品・役務(サービス)やその広告・取引用の書類・通信に、その商品の原産地・品質・内容・製造方法・用途・数量や、役務の質・内容・用途・数量について誤認させるような表示を使用したり、その表示をして役務を提供する行為 |
国産洋服生地に「マンチェスター」と押捺した行為、「MADE IN KOREA」の表示を外して服を販売した行為、「みりん風調味料」を「本みりん」のように紛らわしい表示をして商品を販売した行為等 |
競争者営業誹謗 行為(第14号)
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自己と何らかの競争関係にある他人の営業上の信用を害するような虚偽の事実を他人に告げたり流布したりする行為 |
ライバル会社の商品が特許侵害品であると虚偽の事実を流布し、営業誹謗を行った行為 |
代理人等商標無断 使用行為(第15号)
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外国(条約で保護された国)における商標について、商標権者の承諾無しに、その代理人がその商標と同一または類似する商標を同種の商品、役務に使用し、その商品の譲渡若しくは輸入等を行い、その類似商標を使用して役務を提供する行為 |
外国製品の輸入代理店が、その外国メーカーの許諾を得ずに勝手にその商標を類似の商品に使用するような行為 |
訴訟
不正競争防止法は、広い権利形態を保護することから、知的財産訴訟の約4分の1を占めるに至っており、訴訟においても、非常に重要な領域となりつつあります。 しかしながら、不正競争に係る訴訟においては、不正競争行為の形態の認定において、一定の要件を有する必要があることから、抗弁の形態として、その不正競争の要件を満たさない旨を主張することになります。 その際に、不正競争行為と認められなければ、請求は成り立たないことになります。 しかし、不正競争防止法が科す罰則は、たったの5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金で、又はこれが併科されるだけです。
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