家庭裁判所の相続に関する審判

  「横浜のアオヤギ行政書士事務所」が家庭裁判所の相続に関する審判(①相続放棄、②限定承認、③相続の承認又は放棄の期間の伸長、④財産管理人の選任、⑤特別縁故者に対する相続財産分与、⑥遺言書の検認、⑦遺言執行者の選任、⑧遺留分放棄の許可、⑨遺留分の算定に係る合意の許可)につき、解説いたします。 ご質問やご意見は下記のフォームに記載のうえ、メールにて送信下さい。 なお、返信の必要なご質問には、貴メールアドレスをお忘れなく。

 

①相続の放棄の申述

相続人が被相続人の権利(財産)や義務(債務)を一切受け継がない手続です。

申述は、民法により自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないと定められています。 相続人が、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に相続財産の状況を調査してもなお、相続を承認するか放棄するかを判断する資料が得られない場合には、相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立てにより、家庭裁判所はその期間を伸ばすことができます。

相続放棄申述書の記入例

http://www.courts.go.jp/vcms_lf/7427souzokuhouki-seizin.pdf

申述人

相続人(相続人が未成年者または成年被後見人である場合には、その法定代理人が代理して申述します。) 未成年者と法定代理人が共同相続人であって未成年者のみが申述するとき(法定代理人が先に申述している場合を除く。)又は複数の未成年者の法定代理人が一部の未成年者を代理して申述するときには、当該未成年者について特別代理人の選任を家庭裁判所に申立する必要があります。

 

②相続限定承認の申立

相続人が、相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ手続です。 相続人が、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に相続財産の状況を調査してもなお、相続を承認するか放棄するかを判断する資料が得られない場合には、相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立てにより、家庭裁判所はその期間を伸ばすことができます。

限定承認の申立書記入例⇒http://www.courts.go.jp/vcms_lf/7429genteisyounin.pdf

 

③相続の承認又は放棄の期間の伸長

相続人が被相続人の相続について承認又は放棄をする期間を伸長するための手続です。 申立ては、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にする必要があります。

相続の承認又は放棄の期間伸長の申立書記入例

http://www.courts.go.jp/vcms_lf/7430kikanshinchou.pdf

 

④相続財産管理人の選任

相続人がいない場合に、相続財産を清算するための手続です。 相続人の存在、不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして、結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる。)には、家庭裁判所は、申立てにより、相続財産の管理人を選任します。 相続財産管理人は、被相続人の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い、清算後残った財産を国庫に帰属させることになります。 なお、特別縁故者(被相続人と特別の縁故のあった者)に対する相続財産分与がなされる場合もあります。

相続財産管理人の選任の申立書記入例⇒http://www.courts.go.jp/vcms_lf/7431souzaikan-sennin.pdf

申立人になれるのは

・利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)

・検察官

 

⑤特別縁故者に対する相続財産分与

相続財産管理人が選任されている場合に、相続人でない人で特別な縁故関係にあった人が、相続財産を得る手続です。  相続人の存否が不明の場合に家庭裁判所により選任された相続財産管理人が被相続人の債務を支払うなどして清算を行った後、家庭裁判所の相続人を捜索するための公告で定められた期間内に相続人である権利を主張する者がなかった場合、家庭裁判所は、相当と認めるときは、被相続人と特別の縁故のあった者の請求によって、その者に、清算後残った相続財産の全部又は一部を与えることができます。

特別縁故者に対する相続財産分与の申立書記入例

http://www.courts.go.jp/vcms_lf/7432tokubetsuenkosha.pdf

 申立人になれるのは

・被相続人と生計を同じくしていた者

・被相続人の療養看護に努めた者

・その他被相続人と特別の縁故があった者

 

⑥遺言書の検認

 遺言者が自分で書いた「遺言書」を持っている人が遺言者の死亡後にしなければならない手続です。  遺言書(公正証書による遺言を除く。)の保管者又はこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければなりません。 また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。 検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。 遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

遺言書の検認申立書記入例⇒http://www.courts.go.jp/vcms_lf/7433igonshokennin.pdf

申立人になれるのは

・遺言書の保管者

・遺言書を発見した相続人

 

⑦遺言執行者の選任

遺言の内容を実現するための「執行者」を選任するための手続です。  遺言によって遺言を執行する人が指定されていないとき又は遺言執行者がなくなったときは、家庭裁判所は、申立てにより、遺言執行者を選任することができます。 遺言執行者とは、遺言の内容を実現する者のことです。

遺言執行者の選任申立書記入例⇒http://www.courts.go.jp/vcms_lf/7434igonshikkousha.pdf

申立人になれるのは

利害関係人(相続人、遺言者の債権者、遺贈を受けた者など)

 

⑧遺留分放棄の許可

相続人が被相続人の生前に、相続財産に対する遺留分を放棄するための手続です。 遺留分とは、一定の相続人のために、相続に際して法律上取得することが保障されている遺産の一定の割合のことをいいます。 この遺留分を侵害した贈与や遺贈などの無償の処分は、法律上当然に無効となるわけではありませんが、遺留分権利者が減殺請求を行った場合に、その遺留分を侵害する限度で効力を失うことになります。
 遺留分を有する相続人は、相続の開始前(被相続人の生存中)に、家庭裁判所の許可を得て、あらかじめ遺留分を放棄することができます。

※ 遺留分減殺請求とは、遺留分を侵害された者が、贈与又は遺贈を受けた者に対

  し、相続財産に属する不動産や金銭などの返還を請求することをいいます。

遺留分放棄の許可申立書の記入例⇒ http://www.courts.go.jp/vcms_lf/7435iryubunhouki.pdf

申立人になれるのは

遺留分を有する相続人

 

⑨遺留分の算定に係る合意の許可

一定の要件を満たす中小企業の後継者が、遺留分の算定についてなされた合意の許可を求める手続です。 この申立ては、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」中の「遺留分に関する民法の特例」の規定に基づく遺留分の算定に係る合意の許可を求めるものです。
 「遺留分に関する民法の特例」の規定においては、一定の要件を満たす中小企業の後継者が、所要の手続を経ることを前提として、以下の特例などの適用を受けることができる旨定められています。

1.後継者が旧代表者からの贈与等により取得した株式等について、遺留分を算定す

  るための財産の価額に算入しないこと

2.後継者が旧代表者からの贈与等により取得した株式等について、遺留分を算定す

  るための財産の価額に算入すべき価額を合意の時における価額とすること

 

 この手続を利用するためには、旧代表者の推定相続人(兄弟姉妹及びその子を除く。)全員で合意書面を作成し、その合意をした日から1か月以内に、後継者が経済産業大臣に対して、合意についての確認の申請を行う必要があります。 後継者は、その確認を受けた日から1か月以内に、家庭裁判所にこの申立てをする必要があります。 家庭裁判所は、その合意が当事者の全員の真意に出たものであるとの心証を得なければ合意を許可することができません。 許可の審判が確定すると、合意の効力が生じます。

※ 対象となる中小企業や後継者等の範囲、合意書面の記載内容、経済産業大臣の確認の手続、各相談機関の連絡先等については、⇒中小企業庁のホームページを参照下さい。

遺留分の算定に係る合意の申立書の記入例⇒http://www.courts.go.jp/vcms_lf/7441iryubunsanteigoui.pdf

申立人になれるのは

経済産業大臣の確認を受けた後継者

 

審判手続判例 (最大判昭和41年3月2日)

審判手続においてした判断には既判力が生じないから、これを争う当事者は、別に民事訴訟を提起して右前提たる権利関係の確定を求めることをなんら妨げられるものではなく、そして、その結果、判決によって右前提たる権利の存在が否定されれば、分割の審判もその限度において効力を失うに至るものと解される。