「横浜のアオヤギ行政書士事務所」が家庭裁判所の相続調停につき、解説いたします。 遺産相続は、相続人間で紛争もなく、スムースに相続手続きするのが良いのは、解っているのですが、なかなか思うようにはいかないのが現状です。 家庭裁判所の相続調停には、次の4調停があります。 ①遺産分割調停、②寄与分を定める処分調停、③遺留分減殺による物件請求調停、④遺産に関する紛争調整調停があります。 ご質問やご意見は下記のフォームに記載の上、メールにて送信下さい。 なお、返信要望のご質問には、メールアドレスをお忘れなく。
1.遺産分割調停
遺産の分割について相続人間で話合う手続です。 被相続人が亡くなり、その遺産の分割について相続人の間で話合いがつかない場合には家庭裁判所の遺産分割の調停又は審判の手続を利用することができます。 調停手続を利用する場合は、遺産分割調停事件として申し立てます。 この調停は、相続人のうちの1人もしくは何人かが他の相続人全員を相手方として申立てるものです。 調停手続では、裁判所は、当事者双方から事情を聴いたり、必要に応じて資料等を提出してもらったり、遺産について鑑定を行うなどして事情をよく把握したうえで、各当事者がそれぞれどのような分割方法を希望しているか意向を聴取し、解決案を提示したり、解決のために必要な助言をし、合意を目指し話合いが進められます。
なお、話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され、裁判官が、遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して、審判をすることになります。
調停の申立ては、相手方の住所地(複数いる場合には、そのうちの1人の住所地)の家庭裁判所又は当事者の合意で定めた家庭裁判所に申立てます。 調停分割の手続は、家事審判官1名と調停委員2名で組織される調停委員会が当事者の意見を聞きながらすすめていきます。 実質的には調停機関の関与する協議分割といえます。
遺産分割調停記入例
⇒http://www.courts.go.jp/vcms_lf/7521isanbunkatsu.pdf
申立人になれるのは
①共同相続人
②包括受遺者
③相続分譲受人
2.寄与分を定める処分調停
遺産分割の際に、被相続人の財産の維持又は増加について特別に寄与した相続人の寄与分について話合う手続です。 遺産分割に当たって、共同相続人のうち被相続人の財産の維持又は増加について特別に寄与した者には、法定相続分の他に寄与分が認められますが、寄与分について相続人の協議が調わないとき又は協議ができないときには、家庭裁判所の調停又は審判の手続を利用することができます。 調停手続を利用する場合は、寄与分を定める処分調停事件として申し立てます。
調停手続では、裁判所は、当事者双方から事情を聴いたり、必要に応じて資料等を提出してもらった上で、解決案を提示したり、解決のために必要な助言をし、合意を目指した話合いが進められます。
なお、話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、審判手続が開始されますが、遺産分割審判の申立てをしないと不適法として却下されることになります。
寄与分を定める処分調停記入例
⇒http://www.courts.go.jp/vcms_lf/7522kiyobun.pdf
申立人となれるのは
被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした相続人
※ 申立人以外の共同相続人全員が相手方になります。
3.遺留分減殺による物件請求調停
遺産相続において贈与や遺贈のために法定の最低限度を下回った者からの回復について話合う手続です。 遺留分とは、一定の相続人のために、相続に際して、法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合のことで、被相続人の生前の贈与又は遺贈によっても奪われることのないものです。 遺留分減殺請求とは、遺留分を侵害された者が、贈与又は遺贈を受けた者に対し、遺留分侵害の限度で贈与又は遺贈された物件の返還を請求することです。 遺留分減殺による物件返還請求について当事者間で話合いがつかない場合や話合いができない場合には、遺留分権利者は家庭裁判所の調停手続を利用することができます。 なお、遺留分減殺は相手方に対する意思表示をもってすれば足りますが、家庭裁判所の調停を申し立てただけでは、相手方に対する意思表示とはなりませんので、調停の申立てとは別に内容証明郵便等により意思表示を行う必要があります。 この意思表示は、相続開始及び減殺すべき贈与又は遺贈のあったことを知ったときから1年又は相続開始のときから10年を経過したときは、することができなくなります。
遺留分減殺による物件請求調停記入例
⇒http://www.courts.go.jp/vcms_lf/7523iryubungensaiseikyu.pdf
申立人になれるのは
①遺留分権利者(直系卑属、直系尊属及び配偶者)
②遺留分権利者の承継人(遺留分権利者の相続人、相続分譲受人)
4.遺産に関する紛争調整調停
相続人間において遺産に関する紛争がある場合にそれを話し合う手続です。 例えば、相続人の1人の名義になっている不動産が被相続人の相続財産であるかどうかについて、相続人の一部で争いがある場合など、相続人の間で相続財産の有無、範囲、権利関係等に争いがある場合に、当事者間での話合いがまとまらないときや話合いができないときには、家庭裁判所の調停手続を利用することができます。 紛争の内容が相続人全員に及ぶ場合など、相続人全員を手続に参加させる必要があるときは、遺産分割事件として申立てをすることが必要な場合があります。
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