秘密証書遺言

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   遺言(ゆいごん、いごん)とは、日常用語としては形式や内容にかかわらず広く故人が自らの死後のために遺した言葉や文章を言います。 日常用語としては「ゆいごん」と読まれることが多いです。 このうち民法上の法制度における遺言は、死後の法律関係を定めるための最終意思の表示をいい、法律上の効力を生じせしめるためには、民法に定める方式に従わなければならないとされています(民法960条)。 法律専門家は「いごん」と読むことが多いです。

 

 秘密証書遺言とは、民法で規定されている普通方式の遺言の一つです。 遺言書の内容や存在を秘密にすることができますが、遺言を執行する際には家庭裁判所の検認を受ける必要があります。

 秘密証書遺言は、遺言者が、遺言の内容を記載した書面(自筆証書遺言と異なり、自書である必要はないので、パソコン等を用いても、第三者が筆記したものでも構いません。)に署名押印をした上で、これを封じ、遺言書に押印した印章と同じ印章で封印した上、公証人及び証人2人の前にその封書を提出し、自己の遺言書である旨及びその筆者の氏名及び住所を申述し、公証人が、その封紙上に日付及び遺言者の申述を記載した後、遺言者及び証人2人と共にその封紙に署名押印することにより作成されるものです。  遺言書は遺言者に返却され、公証役場には封筒の控えのみ保管されます。 公証役場の作成費用は11,000円です。
 上記の手続を経由することにより、その遺言書が間違いなく遺言者本人のものであることを明確にでき、かつ、遺言の内容を誰にも明らかにせず秘密にすることができますが、公証人は、その遺言書の内容を確認することはできませんので、遺言書の内容に法律的な不備があったり、紛争の種になったり、無効となってしまう危険性があります。 また、秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同じように、この遺言書を発見した者が、家庭裁判所に届け出て、検認手続を受けなければなりません。 

 秘密証書遺言については、自筆遺言や公正証書遺言と比べてメリットが小さいので、殆ど用いられていません。  秘密証書遺言の唯一の長所は、遺言の内容を誰にも知られないことです。

 

秘密証書遺言の民法条文を記載し、解説いたします。

第970条(秘密証書遺言

1.秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

 ─ 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。

 二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。

 三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書 

   である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。

 四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺

   言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

2.第968条第二項の規定(自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を 

  指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所 

  に印をおさなければ、その効力を生じない。)は、秘密証書による遺言について

  準用する。

第971条(方式に欠ける秘密証書遺言の効力)

 秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、第968条に定 

 める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。

 解説:遺言は方式を厳守しなければ無効となるのが原則であるが、秘密証書遺言の

 場合、その方式に欠けるものがあっても、全体として自筆証書遺言としての方式を

 具備していれば、自筆証書遺言として有効となる。 なお、公正証書遺言について

 は本条のような規定が設けられていないため、方式に欠ける公正証書遺言は無効に

 なると解されます。

第972条(秘密証書遺言の方式の特則)

1.口がきけない者が秘密証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び

  証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を

  通訳人の通訳により申述し、又は封紙に自書して、第970条第1項第三号の申述に

  代えなければならない。

2.前項の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、

  その旨を封紙に記載しなければならない。

3.第1項の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨を封紙

  に記載して、第970条第一項第四号に規定する申述の記載に代えなければならな

  い。