福祉型信託

 「横浜のアオヤギ行政書士事務所」福祉型信託につき解説いたします、福祉型信託「高齢者や障害者の生活支援の為に一定の財産を信託するもの」と定義されます。 ご質問やご意見は下記のフォームに記載の上、メールにて送信下さい。 なお、返信希望のご質問には、貴メールアドレスの記載をお忘れなく。

 

 信託とは、ある人(委託者)が、自分が有する一定の財産を別扱いにして、信頼できる人(受託者)に託して名義を移し、この託された人において、その財産を一定の目的に従って管理活用処分し、その中で託されてた財産や運用益を特定の人(受益者)に給付しあるいは財産そのものを引渡し、その目的(財産の承継や受益者の生涯の生活の支援・福祉の確保)を達成する法制度です。

 信託が設定されると、その財産(信託財産)は、受託者の名義になりますが、誰の財産でもなくなります。 設定者からの遺産からも除外されます。

 福祉型信託とは、財産管理できない認知症の妻や高齢者、障害を持つ子(受益者)のために、相続させる財産を信頼できる堅実な人(受託者)に託し、これを管理して貰うとともに、受益者に必要な給付をして貰う(生活費や病院代等を支払って貰う)仕組みです。 財産管理が出来ない人のための成年後見制度を補完してこれに代わる制度です。

 

信託行為(信託を設定する方法)

 1.信託契約

  委託者と受託者との契約の締結によって信託が設定される信託の形態です。 法 

  は、信託契約について特別の方式や書式などの定めはありません。

2.遺言信託

  委託者、すなわち遺言者の遺言を通じて信託を設定する形態の信託です。 遺言 

  であり、委託者の単独行為によって行われる要式行為であるが、信託法上はその

  方式等の定めはありません。

3.自己信託

  いわゆる「信託宣言」であり、委託者の単独行為で信託が設定されます。  従来、

      日本では認められていませんでしたが、欧米では広く認められ利用されている制

  度でしたので、改正信託法(新信託法)において新設され、日本でも利用可能と

  なりました。 自己信託では、委託者と受託者が同一となることを踏まえ、受益

  者の保護のために、通常の信託の場合の規制に加え、信託設定が真正になされた

  ことを弁護士・公認会計士・税理士等にチェックさせるなどの義務が課されてい

  ます。 また、受益者(実質的な受益者を含む)が50名以上となる場合には、信

  託業法の規制対象となります。 自己信託は、信託財産とすることを宣言するだ

  けで信託を成立させるため、成立要件として、原則として自己信託公正証書を作

  成しなければなりません(信託法4条3項1号)。 公正証書によらない場合は、

  受益者として指定された第三者に確定日付のある書面により信託内容を通知すれ

  ば自己信託が成立します(信託法4条3項2号)。

      自己信託の定義(信託法第3条第3号)
      「特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその

      他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書そ

      の他の書面又は電磁的記録で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の法

      務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法」

 

信託委託者(信託を設定する人)

後見的支援型信託にあっては、

1.本人が受益者になる高齢者

2.認知症の配偶者を抱える夫または妻

3.要保護者を抱える両親

家産承継型の家族信託にあっては、

1.受益者の配偶者(夫、場合によっては妻)

2.両親

3.兄姉など看護者

4.子の親権者(母親)

5.孫の祖父母(教育資金の給付)

6.その他の親族(叔父叔母)

信託受益者(信託で利益を受ける人)

相談例では、

1.高齢の配偶者と委託者本人(契約のとき)

2.認知症の配偶者

3.障害を持つ子

4.未成年者の子(以上は要保護者)

5.無計画で消費癖の強い子や配偶者

6.後添えの配偶者若しくは内縁の妻(夫)

7.事業継承者としての子及び孫

8.委託者本人及び祖先の祭祀にかかわる者など

 

信託受託者(信託事務を処理する人)

受託者は信頼できる人を選択する。 相談では、これが先ず問題になります。 一般的に次の者が考えられます。

1.親族の中で堅実な人(子、兄弟姉妹、甥姪など)

2.専門職(弁護士、その他の士業、信託法の制約を受ける)

3.信託銀行(手数料など経費が割高)

4.法人受託者

  受益者個人の保護のための法人を立ち上げる(一般社団法人、合同会社など)

  既存の、個人資産管理会社を活用する。

 

信託の目的

信託の目的は必ず定めなければなりません。 受託者が何をなすべきか、事務処理の指針及び基準となる「特定された信託の目的」を定めることは不可欠です。

「命令的な行動の指針」であり、「受託者がどのような行動をとるべきかが決定される基準」であります。 後見的財産管理の信託にあっては、受益者「安定した生活の支援と福祉の確保」などと、多くは定型化されています。 家産承継型信託にあっては「信託財産の適正な管理と確実な承継」となります。

 

信託財産

信託財産は、委託者の財産から分離可能な管理承継出来る価値のある財産とされます。

1.信託行為で信託財産が確定されていることが求められている。

2.信託財産は、委託者からも、受託者からも、さらに受益者からも独立した、だれ 

  のものでもないな遺産という、特殊な財産となります。

3.登記・登録を対抗要件とする財産(不動産など)は、信託の登記登録すること、そ

  の他信託の表示などが必要です。

4.信託財産はさまざまです。

 

信託期間

その多くは、信託行為に、信託の存続期間を記載し、これが信託の終了事由になっています。 信託期間の多くは、

1.受益者の死亡まで

2.信託財産の消滅まで

3.受益者が未成年の場合は、「成年に達したとき」、あるいは「受益者の大学卒業 

  時(または平成〇年〇月○日)まで」

4.本信託効力発生後20年間

5.法定の信託期間(信託法91条)、目的信託は20年

 信託法91条:(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのあ

 る信託の特例)受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者

 が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取

 得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から30年を経過した

 時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受

 益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。

 

信託の終了と清算

信託は、①信託目的の達成又は達成不可能なとき、②信託行為において定めた事由が生じた時に終了します。 契約にあっては、委託者、受益者の合意によっても終了させることが出来ます。

 

信託の清算手続き

清算委託者による①現務の終了、②債権の取り立てと債務の弁済、③残余財産の給付を行います。 残余財産は、残余財産の受益者・権利帰属者に給付されます。 

 指定を受けた者が給付を受けられない場合などは、法の定めに従って帰属(委託者又はその相続人、いなければ清算受託者帰属します。)の相続人、いなければ清算受託者に帰属します。)

 

福祉型信託と成年後見制度との連携
1.親死亡後の問題と福祉型信託の関連
  親の死亡後、障害のある子供の財産管理と身上看護をどうするのかという問題を

  解決する一つの方法です。

 ①福祉型信託を活用するメリット

 ・ 障害のある子供等に対して生活費等を安定的に給付することが可能となります。
 ・ 成年後見人等に課せられている長期的な財産管理の負担が減り、より身上看護面

       に重点を置くことが可能となります。
 ②具体例
  収益物件を所有する親が、自己の死亡後、当該不動産収益を子供の生活費として 

  給付します。
 ③問題点
  受託者が単に生活費を安定的に給付するだけでは、障害のある子供たちが適正な

  生活を送ることが出来るのか?が問題です。
 ④解決策
  障害のある子供が適正に生活費を利用することができるよう成年後見人等の支援

  者と連携することで解決できると考えられます。
 ⑤受託者適格
  受託者は継続的かつ長期的な財産管理が要求され、受託者の空白状態を避けるた 

  めにも、永続的且つ信頼性の高い人や法人が受託者となるべきと考えます。
2.任意代理契約と関連
  判断能力が健常である限り、例え、重い身体障害により財産管理ができない場合 

  でも、任意後見制度を利用できません。 そこで、実務においては、任意後見人

  と同様の役割を受任者が担う「任意代理契約」を締結し、財産管理や身上監護を

  遂行することが出来ます。

 ①任意代理契約の問題点
 ・ 法律上、任意代理人の監督者が存在しないことです。
 ②福祉型信託の利用可能性
 ・ 任意代理及び任意後見契約を締結する前提として信託契約を締結します。 これ

  により、受託者が財産の管理処分を行い、任意代理人は契約で定めた法律行為等

  の代理を行う等、役割分担が可能となります。
 ③福祉型信託利用メリット
 ・ 任意代理人個人が財産管理する場合に比べ、監督制度が充実している信託の受託 

  者が財産管理を行うほうが、より委任者(委託者)の安心になります。 すなわ 

  ち、財産管理制度の利用の増加、ひいては多くの高齢者等の生活の安全確保に寄

  与できると考えられます。
 ・ 任意代理人の財産管理の負担が軽減されます。

3.死亡後事務に福祉型信託の活用
  実務上は、前述の任意後見契約の特約として委任者が死亡した際の「死亡後の事 

  務」の条項が付される場合があります。
  ※典型例・葬儀、埋葬、供養に関する手続きとその費用の支払い
 ・家財道具、身の回りの生活用品等の処分 等々
 ①死亡後事務の問題点
 ・ 任意代理契約、任意後見契約が発効した後に、委任者が死亡した場合、相続人か 

  ら金融機関に委任者が死亡した旨の連絡がなされることで預貯金口座は凍結され 

  てしまいます。 委任者死亡後即座に訪れる葬儀の手続きとその費用の支払いの 

  ための預貯金の払い戻しはできない可能性が高くなります。
 ②既存の解決策
 ・ 委任者が生前に、葬儀費用等の死亡後の事務費用として任意後見受任者に預託す 

  る方法があります。
 ③「②」の解決策における問題点
 ・ 任意後見受任者が委任者よりも先に死亡すると、委任者の預託金が任意後見受任

  者の相続財産に混在してしまう危険があります。
 ・ 任意代理制度と同様、法律上の監督者は存在しません。 そのため、長期間にわ 

  たる預託金管理の透明性の維持が困難となる場合があります。
 ・ 受任者が自然人、法人いずれの場合においても、倒産リスクがあります。
 ④福祉型信託利用の優位性
 ・ 受託者には、法律上様々な義務が課せられています。
 ・ 受託者は、監督官庁による監督がなされます。
 ・ 受託者の倒産リスクも回避できます。
 ⑤受託者適格
 ・ 長期的な財産管理となり、死亡後事務においても委任者の意思が尊重されるべき 

  であることから、永続的且つ信頼性の高い人や法人が受託者となるべきです。

 

福祉信託のニーズ 

福祉型信託において応えられるニーズには、以下のようなものがあります。
・高齢者・障がい者の財産管理
・親亡き後の子の生活保障
・自分亡き後の配偶者の生活保障
・認知症などにより自分の判断能力が衰えた場合に備えて財産の管理をして欲しい
・死後の葬儀、供養、支払い等を円滑に行いたい、死後の財産争いを防ぎたい
・自分が認知症や身体が不自由になっても不動産を安定的に管理していきたい
・交通事故・労災事故被害者が受け取った高額賠償金等を安定的に管理していきたい

 通常の遺言では対応できないケース
 遺言書は、自分が希望する相手に財産を渡すことができる非常に便利なものです

 が、次のような場合には対応することができません。 なぜなら、本人の死亡と同

 時に一括で遺産を渡すのが遺言の原則だからです。
 ①年金のように毎月定額を渡してほしい。
 ②遺産の相続人や受遺者が一定の年齢になった時に遺産を渡してほしい。
 ③遺産の相続人や受遺者が、将来その遺産を使いきれずに死亡したら、その次の財

  産の貰い手を指定したい。
 ④特定の目的(家の増改築や入院、施設入所等)のために遺産を活用したい。
 「信託」という法律行為を利用することで、これらのニーズに応えることが可能に 

 なります。 具体的には、単に「誰にどんな財産をあげる」というのではなく、遺 

 言の中で遺産を信託財産」に組み込み、信託の枠組みの中で「誰に、いつ、何の

 目的のために、どのような形で財産をあげるのか」を指定することができるので

 す。
2. 成年後見では対応できない財産管理
 判断能力の不十分な高齢者・障害者の財産管理の手段として利用される成年後見制

 度ですが、この制度にも限界があり、次のようなニーズには対応することができま

 せん。 
 ①判断能力が低下した後でも、積極的な資産運用(株式投資や賃貸不動産の取得

  等)をしたい。
 ②判断能力が低下した後でも、相続税対策として生前贈与を継続していきたい。
 「信託」という法律行為を利用することで、これらのニーズにも応えることが可能 

 になります。 成年後見人に財産管理の依頼に替えて、契約で信頼できる人に今か

 ら財産を託し、本人の趣旨(目的)に沿った管理を委任することで、使い勝手のよ

 い財産管理の手法として利用することが可能になります。
3. 不動産の共有化に伴うリスクを回避
 不動産を所有権で共有すると、下記のようなリスクがあります。
 ①既に共有となっている不動産については、将来売却処分や建替え等をしたいとき 

  に共有者全員の協力がスムーズに得られない可能性がある(例えば、共有者が海

  外赴任になったり、行方不明になったり、共有者に相続がおきて不仲な相続人が

  所有者になったり)。
 ②将来、不動産を共同相続させてしまうと、上記①と同様の可能性がある。
  上記①②のリスクを、所有権ではなく「信託受益」として共有することで、不 

 動産の共有者と同様の権利・財産的価値は保持させたまま、不動産の管理処分権限

 だけを受託者に集約させることで、不動産の“塩漬け”を防ぐことができます。

福祉型信託の活用例

Ⅰ.親は子よりも先に亡くなるのが通常です。 その子が障がい者であった場合、親

  は「自分の死後、子がどうなるのか」を常に不安に感じています。 その対策と

  して、「負担付遺贈」という手法がありました。 親は、障害を持つ子以外の者

  に財産を多めに残す代わりに、障害を持つ子の世話(負担付)をするよう遺言を

  していました。 しかし、多めに財産を受け取った者(受贈者)が、障害を持つ

  子の世話をせずにトラブルになったり、この受贈者が破産した場合、子の生活支

  援のお金が無くなってしまうなど、非常にリスクの多い手法でした。 また、法

  的な監督者もなかったため、実効性に乏しいという状況が続いていました。
Ⅱ.親の世帯と子の世帯が離れて暮らすことが多くなった昨今、高齢の夫婦が抱える

  問題として、夫が亡くなった後に、残された妻が既に認知症を抱えていたり、身

  体が衰え介護が必要な状態になっていた場合に財産管理・身上監護をどうするの

  かといった問題があります。
  上記Ⅰ、Ⅱのような問題に対しては、後見制度を活用していくことで、解決が図 

  られています。 障害を持つ子や認知症の奥さんに後見人が付くことで、子や奥

  さんの財産管理・身上監護を支援していくことができます。 ただし、後見制度

  を活用した場合、子や奥さんの保護・支援に重きを置いているため、財産管理も

  硬直的な取扱いにならざるを得ず、逆に制度の利用を敬遠されるケースも見られ

  ます。 そこで、民事信託(福祉型信託含まれる)の登場となります。 これによ

  り以下のようなことが実現できます。
 1.夫や親が委託者となり、妻や障がいを持つ子を受益者とします。 受託者には

   親族等を選び、財産管理を任せます。 受託者は、信託で定められた範囲の中

   でしか財産の管理・処分はできません。 受益者である妻や子に不利益となる

   行為をさせない仕組みを作ることができます。
 2.1とは逆のことを言っているように見えますが、信託で定めれば、その範囲内

   で、妻や子のための財産保全に配慮しつつ、積極的な財産の運用処分を行って

   いくこともできます。
 3.後継ぎ遺贈型の信託のスキームを組むことで、妻や子の生活保障から一歩進ん

   で、財産を未来の世代に承継させていくこともできます。
 4.受託者となった者が破産しても、信託には財産隔離機能があるため、信託財産

   は保全され、妻や子の生活は守られます。
 5.信託監督人(行政書士など)を選任することにより、受託者が間違いを起こさな

   いよう監督していくことが可能です。
 6.成年後見制度と併用すれば、妻や子の保護・支援を強固にすることができると

   同時に、信託による柔軟な財産管理・処分・運用を行っていくことができま

   す。
Ⅲ.交通事故被害者救済のための民事信託
    交通事故等により高次脳機能障害が残った場合、本人保護のため、成年後見人が

  選任されます。 また、交通事故賠償金は、高額な上に、一括支払い方式による

  ことが多く、後見人が賠償金の管理を持て余すケースも見られます(親族後見人

  では、その傾向が強くなります)。 このような場合に、賠償金等の管理をする

  受託者を別に立て、身上監護を後見人に任せ、財産管理を受託者に任せるという

  役割分担が可能となります。 労災事故などにおいても、同じスキームが適用で

  きます。 福祉型信託では、成年後見制度との組み合わせにより、本人を支援し

  ていく体制を構築していくことが望ましいと言えるでしょう。

信託類似の制度との比較
委任は、対等な関係による契約という方法で法律関係を生みますが、信託は契約に

 限らず、遺言、自己信託の単独行為ができます。 委任契約には相手方がいます

 が、自己信託には相手方はいません。
委託では財産の所有は本人であり所有権は移転しませんが、信託では受託者の名義

 になります。 信託された財産は、受託者の固有財産でもなく相続財産にもなら

 ず、また委託者のものでもなく、利益を受ける受益者のものでもないので、手続き

 に誤りがなければ倒産隔離機能が働きます。
委託契約は、委任者の命令は絶対的ですが、信託は基本的には受託者のみが信託目

 的に従い管理処分権限があります。
任意後見契約の場合任意後見監督人が置かれ、法定後見も必要により後見監督人が

 置かれますが、信託には裁判所の直接的な関与は無く、受益者保護の観点から受託

 者を監督する信託監督人、受益者代理人制度等があります。 信託なら本人のため

 以外にも利用できます。
委任には第三者のための契約は限定的ですが、信託の基本は他益信託であり、その

 受益者の権限は強いです。
⑥受任者は民法644条の善管注意義務などを負いますが、受託者はさらに忠実義務、

 誠実公平義務、分別管理義務等があります。
⑦受託者は勝手に辞任できませんが、委任はいつでも解除できます(民法651条)。

 また、委任は当事者の死亡により原則終了しますが、信託は終了しません。

 

民事信託利用の留意点
①最優先目的を明確にする
②スキーム・受託者等の役割について関係者の理解を得る(説明責任を果たす)
③他の方法と比較をする(適正なスキームか、設定できるか、受託できるかのチェッ 

 ク(適合性)を踏まえて、信託を利用するメリット・デメリットを明確にする)
④相続・遺留分減殺、課税の関係・資産移動を必ずシミュレートする
⑤ 他の分野の専門家と連携・検証する(立場・立ち位置を明確にする)
 守りたい本人には個性があり、取り巻く家庭環境・財産等の状況も異なります。  

 設定(また委託者死亡)に際して、委託者・受益者本人を理解すること、ライフプ

 ラン、環境とその変化を想定することが大切で、委託者(必要によっては将来の受

 益者)との面談を十分に重ね・意思を確認して、期待されている長期に亘る目的が

 受託者として達成できるか・なし得ることかを確認します。 委託者・受益者等が

 納得できる関係者全体がウイン・ウインになるスキームかを確認します。 受託者

 として一番避けたいトラブルが委託者・受益者との誤解から生ずるトラブルです。  

 信託期間が長期に亘ることから、信託目的のために信託事務が適正に運営されるス 

 キームを構築する努力が必要となります。 どんなスキームにするか、上記の信託

 関係者をどのように構成するか、リスク、費用負担等を踏まえ他の信託を使わない

 スキームとよく比較検討する必要があります。 信託スキームを検討する場合にお

 いても、相続に係るトラブル、特に遺留分減殺の対応をどのようにするか。 ま

 た、相続税、所得税が誰にどの程度負担となるか、その影響と資金負担の対応、そ 

 の他取り巻く事項への影響を総合的に検証について、他の方法と比較します。 比

 較・検証する場合において他の分野の専門家と連携して行います。 専門家と連携

 すること、またその内容、問題・留意事項の可能性について関係者の理解を得てお

 く必要があります。 信託の基本スキームの理解(名義移転・信認)、受託者の権

 利義務(排他的管理権)、受益者の権利義務(受動的・監督権)について、委託

 者・受益者等の理解は不可欠であり、時間をかけて・具体的な例を挙げて図式等に

 より説明に時間をかけます。 また、自らの立ち位置を明確にして説明します。  

 また、信託のスキームを長期に亘り維持するための人間関係を構築することができ

 るか。当事者だけでなく、信託を支え続ける関係者の良き理解者が必要であり、専

 門家の協力も求められ、コスト負担になる可能性が高いです。 信託財産の管理・

 運用・処分に加え受益者に対する信託財産の交付に関して広範な裁量が与えられる

 と、受託者責任が重くなり、希望する交付を受けなかった受益者から訴えられる危

 険があります。 また、信託の仕組みであっても委託者・受託者・受益者の信用に

 不安があれば現実的に大丈夫・安心とは言えないと思われます。 信託の特徴は所

 有権を受託者に移転することですので、信認関係がなければできなません。 どの

 ような信託スキーム、どのような信託関係者を構成すれば一層の信認関係が構築で

 きるだろうか、今後の検討課題です。 なお、法律専門家が民事信託を提案する場 

 合、そのスキームの中でどの立場で信託終了まで関与するのか、またどの立場で委

 託者等に説明するかについて明らかにして説明すべきです。 法律相談を受けると

 き、どの立場に立って説明するのか、委託者か受託者か受益者か又はその他の関係

 人のいずれの立場から説明するかにより内容は異なります。 利益相反、双方代理

 に陥らないようにしたいです。 また、今民事信託スキームを提案する場合、信託

 業法が改正されたときにも対応できるよう、信託条項に工夫をしておきたいです。 

 また、(3)にて記述の解釈等々について、専門家としてさらなる精緻な検討が個別の

 事案に即して必要とされています。 しかしながら、基本パターンのスキームの利

 用は現実的ですので、残される問題として次の(2)の受託者等の関係者をどのように

 定めるかについて、関係者と協議して理解を得る必要があります。

 

民事信託の受託者
 ある報告者(信託法研究)は、民事信託の受託者について次のように記述しています。 「個人を受託者とする信託のメリットとして、委託者の当初の移行や受益者の状況をごく身近に把握できるうえで信託事務を行うことができる、デメリットとして、個人受託者が信託財産を適切に管理・運用するためのノウハウが乏しいケース、また個人受託者がその管理能力に見合わない厳格な義務を負うと、無自覚に義務違反を犯してしまう恐れがある、個人受託者の義務を適切に緩和・加重することを通じ、受益者保護を図る面からも信託事務に係るメルクマールのようなものが必要ではないか、個人受託者に求められる適格性について「資力」と「継続力」、高齢者等の日常生活に根差したシンプルなスキームは個人受託者、世代を跨ぐような複雑かつ長期にわたるスキームは法人受託者が引き受けるといった相互補完関係が望まれる等々」です。
 信託事務を委託者の期待に沿えるようより適切に遂行するには、委任・代理の場合のように(受託者ではなく)委託者の目線で専門家を活用するスキームにする。 受託者を牽制する信託監督人、または受益者を代理する受益者代理人のいずれを指定するか、指図者・同意者を就けるか、受託者の信託事務を支援する会計・税務・法務の専門家との契約を付加するか、共同受託者とするか、等々が費用・状況を踏まえて考えられます。
 親族関係者または関係法人を受託者とする場合、確かに利益相反の場面も多数生じるので適正な事務が期待できないリスクも相当ありうるが、専門家の活用によりある程度補えるのではないでしょうか。
 相応しい受託者を選ぶときの大切なポイントは、受託者として委託者・受益者からの信認にどこまで応えプライバシーを守るか、受益者のために信託目的を達成することに心を砕き時間を費やす者であるか否かかが問題であり、受託者の信用・信頼リスクと費用負担の中で委託者が決めることと考えます。 信託業法等によりカバーできることは、受託者が第三者である場合であり、その組織、資力及び実績等がメルクマールになることからと考えます。

精読しておきたい信託法信託税法ほか (まだまだこれから研究される分野!)
信託法91条(※注1)に定める受益者連続信託とはどのような信託なのか。
(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)第91条 受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から30を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有します。
 受益者連続信託は、親族の生活保障等のために有益な法的仕組みです。 条件付・期限付・負担付の贈与・遺贈もありますが、後述する私法上有効性が議論されているこれらの後継ぎ遺贈を使うより私法上の観点から安全です。
《受益者連続信託の信託期間(信託をいつまで続けることができるか?)》
信託設定後30年を経た時の受益者が死亡し、(30年経過時に不在でも)その時以後に現に存している次の受益者と指定されている者が死亡するまで、信託は存続します。
 

信託財産の運用収益に対する課税

・信託に対する収益については、①受益者に発生時課税される信託(受益者等課税信  

 託)を原則とし、②受益者に分配時に課税される信託(集団投資信託[※1]、退職

 年金等信託[※2]、特定公益信託等[※3])、③受託者に発生時に法人税が課税

 される信託(法人課税信託[※4])があります。

・受益者等課税信託では、法的には信託財産が受託者に移転しますが、税制上、受益

 者が信託財産に属する資産、負債、信託財産に帰属する収益、費用を直接有するも

 のとみなして収益の発生時に受益者に課税されます。 信託財産が賃貸用不動産で

 あれば、賃料収入は、その発生した年度に、受益者に対して課税されます。 受益

 者が受託者から実際に収益を受取ったかどうかを問いません。

・信託財産の資産、負債、収益、費用が帰属するものとみなされる受益者には、受益 

 者のほか、信託の変更権限を有し、かつ信託財産収益の給付を受けることができる

 者が含まれます(税法上、みなし受益者といいます)。

・遺言で設定した目的信託でみなし受益者がいない信託のように、現に権利を有する

 受益者がなく、受益者とみなされる者もいない場合には、受益者が存しない信託と

 なり、受託者に法人税が課税される法人課税信託となります。

 (※1)集団投資信託とは、合同運用信託、公社債投資信託、証券投資信託、国内公 

  募投資信託、特定受益証券発行信託をいいます。合同運用信託の収益の分配は利

      子所得、公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の配当は配当所得とされ、こ

      れらの集団投資信託では、他の金融商品との権衡等から、収益の分配時に利子所

      得、配当所得として課税されます。

    (※2)退職年金等信託とは、厚生年金基金信託、確定給付企業年金信託、確定給付

      企業年金基金信託、確定拠出年金信託、国民年金基金信託、適格退職年金信託を

      いいます。これらの信託は、従業員に対する退職金、年金について、信託を用い

      て社外に積立、給付する仕組みであり、支払事由により、退職所得、雑所得 (公 

  的年金等控除の適用あり)等として課税されます。

    (※3)特定公益信託等とは、法人税法において規定されている信託で、特定公益信

  託および加入者保護信託をいいます。これらの信託では、委託者、受託者が信託 

  財産を有するものとみなされません。

    (※4)法人課税信託には、①特定受益証券発行信託以外の受益証券発行信託、②受

  益者等が存しない信託、③委託者を法人とする信託のうち、イ.重要な資産を信

  託するもので、株主を受益者とするもの、ロ.自己信託に類するもので、長期の

      信託、ハ.自己信託に類するもので、配当に裁量権を有するもの、④国内公募投

      資信託以外の投資信託、⑤特定目的信託があります。

委任者以外を受益者とする信託受益者への課税

・信託の効力が生じた時に、委託者以外の者が受益者である場合には、その受益者が

   委託者から信託の利益を享受する権利を贈与(贈与税)死亡に基因して権利を得た

 場合には遺贈(相続税)により取得したものとみなされます。

受益者が追加・交代した場合の取り扱い

・受益者が存する信託において、受益者が追加、交代した場合には、新たに受益者と 

 なった者は、すでに受益者であった者から贈与(遺贈)を受けたものとみなされま

 す。この受益者には、信託法上の受益者のほか、特定委託者が含まれます。
 特定委託者とは、受益者以外の者で、所得税法等におけるみなし受益者と同様の者

 であり、信託の変更権限を有し、かつ信託財産の給付を受けることができる者をい

 います。

・信託法第91条に定める後継ぎ遺贈型および信託法第89条に定める受益者指定権等を

 有する者の定めがある信託等の受益者連続型信託の場合には、先行する受益者が一

 旦、信託財産全体について贈与(遺贈)を受けたものとして取扱われ、先行する受 

 益者の死亡や受益者変更権の行使によって、後続する受益者が受益者となった場合

 には、後続する受益者は先行する受益者から贈与を受けたものとみなされます。

信託終了時の取り扱い

・信託終了時に、受益者以外の者が信託財産の給付を受けた場合には、その者(帰属

 権利者)は、受益者から贈与・遺贈によって信託財産の給付を受けたものとみなさ 

 れます。

 

信託と相続税・贈与税(国税庁レポート)

研究の目的

 新しい信託法は、平成18年12月8日に国会で成立し、自己信託に関する規定を除き、平成19年9月30日に施行されました。 大正11年に制定された旧信託法は、84年ぶりに全面改正されたことになります。 信託法の改正に伴い、平成19年度税制改正により、信託課税制度の抜本的な改正が行われましたが、その中でも、受益者等(又は信託に関する権利)と信託財産等との関係の明確化が図られた点が注目されます。 信託所得課税においては、所得税法第13条と法人税法第12条の規定が基本的な考え方とされ、受益者が特定している場合には受益者が信託財産を有するものとして課税され、受益者が特定していない場合等には委託者が信託財産を有するものとして課税されてきました。 しかし、この税制改正により、いわゆる実質基準が導入され、受益者と同等の地位を有する者は「みなし受益者」とされ、受益者とともに信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなされ、かつ、信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者等の収益及び費用とみなされて課税されることとされました。また、受益者等が存しない信託等については、法人課税信託という制度が導入されました。相続税法においても、従来どおり、受益者課税が採用されているが、法人課税信託となる受益者等が存しない信託については、受託者に受贈益について法人税等が課税されるとともに、一定の場合には、相続税等が課税(課税された法人税額等は控除)されるなど、様々な改正が行われました。
 信託課税制度に関しては、これまで様々な問題があると指摘されてきましたが、今回の税目横断的かつ抜本的な改正により、これらの問題は解決されたのでしょうか。本稿で研究の対象とする相続税等に関しては、「信託行為時課税、受益者課税、信託受益権に対する課税」という3つの特徴を基に、様々な問題提起がなされてきましたが、今回の改正でどのような解決が図られたのか、新たな問題は生じていないのかについて研究の目的としました。 また、信託の歴史からも明らかなとおり、信託は、その所有権の分散機能により、所得隠しや財産隠しに利用されることが懸念されます。 そこで、新しい信託課税制度は、様々な租税回避防止策が講じられたとされていますが、それで十分と言えるかについても研究の目的としました。

研究の内容

信託法の改正内容
 新しい信託課税制度を検討するには、まず新しい信託法の内容を理解しておく必要があり、相続税や贈与税に関連する項目である①信託の設定方法や信託の効力の発生時期、②受益者等、③委託者、④信託の終了及び清算、⑤信託の新たな類型の創設等について検討を行った。

 信託の設定方法は、信託契約、遺言の方法に加え、新たに公正証書等によってする意思表示の方法が認められた。この「公正証書等によってする意思表示の方法」は、これまで認められるか否かについて議論があった、いわゆる信託宣言(自らが受託者として管理することを宣言するもの)と呼ばれる方法である。また、信託法第4条に信託の効力の発生に関する規定が設けられたが、相続税法施行令第1条の11においても同様な規定が設けられ、整合が取られている。

結論

新しい信託法が「資産流動化信託」と「福祉型信託」という全く異質な信託を等しく規律しうるのかについては、今後、様々な議論がされると考えるが、信託課税制度についても同様である。実際に様々な信託が設定されることによって、その真価が問われることとなると考える。
 信託課税制度をどのような仕組みにするかは、大正11年の制度発足当時から様々な検討がされて今日を迎えている。言うまでもなく、信託は弾力性を有するだけでなく、委託者、受託者、受益者という三者が登場し、財産を有する者と受益する者が異なることなどから、課税関係を規定する上で大きな困難を伴うこととなる。さらに、信託の特質を利用して租税回避をしようとする者がいないとも限らないことから、その防止策を意識して課税規定を設けなければならないなど、課税の公平を完全に実現する信託課税制度を構築することは極めて困難であると考える。
 今後、民事の福祉型信託が活用され、具体的な問題が表面化することも予想されるが、第一歩を踏み出した新たな信託課税制度について、今後、様々な議論が行われ、より良い制度となっていくことを期待したい。

 

信託Q&A

Q1:信託財産を譲渡した際の利益に対しての課税は誰にされますか?

A1:受益者に課税されます。 受託者が信託財産(不動産など)を譲渡した際に、

   譲渡益が生じた場合、所得税の課税対象になります。 信託に対しての課税の

   基本原則は、受益者が信託財産を有していると考えます。 そこに財産の移動

   により利益が生じれば、受益者に対して課税するという考え方(受益者等課税

   信託)です。 したがって、信託財産の譲渡したときの譲渡損益は、原則とし

   て受益者に計上され、受益者が課税されることになります。

Q2:受託者が死亡した場合、相続税の対象になりますか?

A2:信託における税法上は、受益者が信託財産を有しているので、単に財産を管理
   しているだけの受託者が死亡し、受託者の変更が生じても、受益者に変更が生
   じなければ、相続税の課税は発生しません。
Q3:信託をすると相続税評価額はどのようにかわるのですか?
A3:委託者(元の所有者)が、その保有資産を信託財産に入れても、相続税評価額
   に変更はありません。 保有資産を信託財産とした場合、相続税評価において
   は、所有権から受益権にその評価対象は変わますが、その受益権の評価額は、
   信託された財産(所有権)の評価額と同額になります。 即ち、信託を組むこ
   と自体は、相続税対策においてメリットにもデメリットにもなりません。
     信託のポイントは、信託を設定して(信託の仕組みを利用して)、何を実現す
         るかという趣旨・目的を明確にすること最大のポイントです。
     具体的には、信託を組むことによって、生前の資産運用・財産管理を柔軟にす
         ることを実現したり(結果的に相続税対策を可能にできます)、委託者の考え 
   を次世代・次々世代に繋げることができます。
Q4:不動産を信託した場合の税金はかかりますか?
A4:不動産を信託すると、信託を原因とした所有権移転登記手続きを行い、登記簿
   の甲区欄にその旨が記載されます(信託登記)。 即ち、登記簿上の所有者が形
   式上委託者から受託者名義に変わります。 この名義変更に伴い、どんな税金
   が課せられるのか、前提として下記の2つのケースに分けて考える必要があり
   ます。
   ①委託者=受益者のケース
   ②委託者≠受益者のケース
   まず、上記①②に共通する税金として、所有権移転登記手続きに課税される登 
   録免許税が発生します。
   これは、当該不動産の固定資産税評価額の4/1000です(所有権移転の登記分は
   非課税で、信託の登記分が4/1000です)。
     受託者に対する不動産取得税については、①②ともに登記簿上の形式的な所有
   権移転という理由で課税されません。 委託者に対する譲渡所得税も、信託に
   よる形式的譲渡で委託者に利益が発生する訳ではありませんので、①②のケー
   スともに課税はありません。 毎年1月1日の不動産所有者に対して課せられる 
   固定資産税、信託による所有権移信託登記をした翌年の5月から7月頃にかけ
   て、不動産の形式上の名義人である受託者に対して、固定資産税の課税通知書
   が送付されますが、実務上は、信託財産に関する費用として、信託財産の中か
   ら受託者が支払いますので、実質的には受益者が負担していることになりま
   す。
   ①②で課税に違いがある場合は次のようなケースです。
   ①のケース
     自益信託(委託者=受益者)は、実質的な財産権の移動(利益帰属先の変更)
         はありませんので、贈与税が課税されることはありません。
   ②他益信託(委託者≠受益者)の場合は、実質的な財産権の移動がおこります
   ので、信託契約が発効したした時点で、委託者から受益者への不動産価格相当
   の贈与がなされたものとして贈与税が課税されます。

 

 

コメントをお書きください

コメント: 3
  • #1

    扇谷喜久男 (火曜日, 07 1月 2014 09:00)

    正月早々の労作を拝見しました
    早速プリントアウト(20P)してバイト先で昼休みにじっくり読みます
    今年もよろしくお願いします

  • #2

    na tej stronie (金曜日, 03 11月 2017 22:17)

    przerabiać

  • #3

    skuteczna wróżka (金曜日, 17 11月 2017 21:35)

    niebieskawozieloni