公正証書遺言

 

 「横浜のアオヤギ行政書士事務所」公正証書遺言につき、解説いたします、ご質問やご意見は下のフォームに記載のうえ、メールにてご送信下さい。 なお、返信希望のご質問には、貴メールアドレスの記載をお忘れなく。

 

    遺言(ゆいごん、いごん)とは、日常用語としては形式や内容に拘らず広く故人が自らの死後のために遺した言葉や文章を言います。 日常用語としては「ゆいごん」と読まれることが多いです。 このうち民法上の法制度における遺言は、死後の法律関係を定めるための最終意思の表示をいい、法律上の効力を生じせしめるためには、民法に定める方式に従わなければならないとされています(民法960条)。 法律専門家は「いごん」と読むことが多いです。

 

 公正証書遺言とは、遺言者本人が公証人に遺言内容を口述し、公証人がその口述を筆記(通常はパソコン入力)し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、また閲覧させて、作成する方式です。 不十分な口述で、公証人が事前作成のメモを読み、遺言者が頷くだけでの公正証書遺言が無効になったは判例がありますので、作成には十分な注意が必要です。 公証役場で公正証書遺言の原本と正本(遺言者・立会人の署名・押印が省略され、公証人が「これは正本である」と記し押印したもの)と謄本が作成され、原本は公証役場に保存(20年)され、正本と謄本が本人に渡されます。   遺言執行者が指定されている場合、正本は遺言執行者、謄本は遺言者本人が保管するのが一般的です。 遺言執行者の氏名がない場合や、とくに謄本が不要な場合は作る必要ありません

 公正証書遺言は作成する内容によって必要な書類が異なりますが、最低限度必要な書類は遺言者本人の印鑑証明書、遺言者と相続人の関係が分かる戸籍謄本です。不動産がある場合はその登記簿謄本固定資産評価証明書が必要となります。 相続人以外の者に遺贈する場合にはその者の住民票が必要となります。  

 公正証書遺言には証人2名以上の立会が必要です。 証人には相続人、受遺者、それらの配偶者、直系血族(親、子、孫)、未成年者や公証人の配偶者等はなれません。  証人は公正証書に押印をしますが、印鑑は実印である必要はありません。      「横浜のアオヤギ行政書士事務所」は信頼のおける証人をご紹介いたしますが、謝礼は一人10,000円程度かかりますので、二人として約20,000円必要となります。

 公正証書に記載されている相続人である受遺者は、他の相続人の同意なしに、不動産の名義変更や預貯金の払い戻しが認められています。 すなわち、相続人である受遺者は他の相続人に遺産内容を知らせずに相続出来ることになります。

  不動産の名義変更(所有権移転登記)は、管轄法務局にて、公正証書遺言、被相続人の除籍簿謄本と住民票の除票、相続人の戸籍謄本と住民票 、不動産の納税通知書の写(評価証明書)など必要書類を添付して申請することになります。

 銀行貯金の場合は、銀行によって別途必要書類等が異なりますから、各銀行に問い合わせて下さい。

 

公正証書遺言のメリット

  遺言書は作成した後も、破棄隠匿・改竄の危険に晒されます。 自筆証書遺言についてはその危険から避けることは出来ません。 また相続開始時に、保管されたまま誰にも発見されず、実現されない危険があります。  公正証書遺言の場合、遺言書の原本が公証役場に保存されるので、こうした心配がありません。  また、遺言者には公正証書遺言作成後、遺言の正本と謄本が渡されますが、これを紛失した場合でも有料で再発行してもらうことが出来ます。 公正証書遺言では、公証人が関与するので遺言が無効になる可能性は極めて低いです。 また、公証役場に遺言書の原本が保管されるので、保管が安全で改竄などのおそれも皆無と言えます。 

 自筆証書遺言と秘密証書遺言は、遺言の実現には検認手続きというかなり面倒な手続きを踏むことが必要となりますが、公証役場で保管されている公正証書遺言検認手続きの必要はありません。  つまり公正証書遺言は、作成時は面倒なのですが、実現時は逆に手続きがし易いのです。 この実現の容易さも遺言書の内容を確実に実現するための重要なポイントです。  公正証書遺言は遺言の実現に、面倒な検認手続きが不要なので、スピーディな相続が出来ることになります。 また、公正証書遺言の内容を変更する場合は、公証役場で、前遺言を破棄して、新しい公正証書遺言を作成することになり、公証役場への費用が再度掛かることになります。 もっとも、新しい遺言書を自筆証書遺言で作成することも可能です。  

 

 公正証書遺言のQ&A

Q 公正証書遺言に、有効期限はあるのですか?

A 公正証書遺言自体に、有効期限はありません。 新しく遺言を作成しない限り、づ

  っと有効です。 公正証書遺言の原本は、公証人役場で20年間保管することにな

  っています(公証人法施行規則27条1項1号)。 しかし、実際は、20年を過ぎて

  も、遺言した人が105歳になるまで保管してくれています(公証人役場によって

  は120歳になるまで保管しているところもあります。)。  したがって、ほと

  んどの場合、原本が破棄されていることはありません。
   相続の手続は、この原本ではなく、公証人役場で発行してもらえる正本で行い

  ます。 正本は、遺言作成のときにもらえますし、原本が保管されていれば、以

  後にも公証人役場で、何通でも入手可能です。
Q 口の利けない方や耳の聞こえない方も公正証書遺言を作成できますか?

A はい、できます。 従前は、公正証書遺言は、遺言者が、「口頭で」公証人にその

  意思を伝えなければならないとされていました。 しかし、民法の改正により、 

  平成12年1月から、口や耳の不自由な方でも公正証書遺言をすることが出来る

  ようになりました。 口の不自由な方は、公証人の面前でその趣旨を自書によ 

  り、自書が出来ない方は、通訳人の通訳で申述することで公正証書遺言ができる

  ようになりました。 そして、公証人が、病院などに赴いて(別途交通費等が必要

  です)、体の不自由な方々の公正証書遺言の作成も多くなってきております。  

  耳の不自由な方には、通訳人の通訳又は閲覧により、筆記した遺言の内容を確認

  することで対応できるようになりました。

Q 亡くなった方の公正証書遺言があるかどうか調べる事ができますか?

A 平成元年以降に作成された公正証書遺言であれば、日本公証人連合会において、

    全国的に、公正証書遺言を作成した公証役場名、公証人名、遺言者名、作成年月   

      日等をコンピューターで管理していますから、すぐに調べることが出来ます。
   利害関係人のみが公証役場の公証人を通じて照会を依頼することが出来ること

      になっていますの、亡くなった方が死亡したという事実の記載があり、かつ、亡

      くなった方との利害関係を証明できる記載のある戸籍謄本と、ご自身の身分を証

      明するもの(運転免許証等顔写真入りの公的 機関の発行したもの)を持参して下

      さい。

Q 公正証書遺言をするには、どんな資料を準備しておけばよいですか?

A 公正証書遺言の作成を依頼される場合には、最低限下記の資料が必要ですので、

      これらを準備しておかれたら、打ち合わせがスムーズに進行すると思います。  

   なお、事案に応じ、他にも資料が必要となる場合もあります。

  ① 遺言者本人の印鑑登録証明書

      ② 遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本

    ③   財産を相続人以外の人に遺言する場合には、その遺贈する人の住民票  

      ④   登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書又は固定資産税・都

            市計画税納税通知書中の課税明細書

    ⑤   遺言者の方で証人を用意される場合には、証人予定者のお名前、住所、 生年

            月日及び職業をメモしたものをご用意下さい。 しかし、だれでも証人にな

            れませんので、証人の選任は注意が必要です。

      民法で遺言の証人または立会人になれないと定められている人は次のような

            人たちです(民法974)。
        (1)未成年者
        (2)推定相続人(遺言者が亡くなったら相続人になれる立場にある人)、受

                  遺者(遺言により財産を貰う人)及びその配偶者並びに直系血族
        (3)公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び雇い人
        なお、証人の資格がない人を証人に立てると遺言が無効になります。

 

Q 公正証書遺言の内容を変更する方法は?

A  民法の定め(1022条)によれば、「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、

  その遺言の全部又は一部を撤回することが出来る」となっておりますので、前に

  作成した遺言をそのままにして、新たに遺言を作成した場合、両者の内容で牴触

  する部分については、後の遺言の方が優先されます(民法1023条)。 複数の遺

  言の間では、公正証書・自筆証書・秘密証書等という形式による優劣はなく、作

  成日時の前後によって優劣が決まります。 公正証書遺言をすでに作成している

  場合には、公証役場で、その公正証書遺言を破棄して、新たに公正証書遺言を作

  成したほうが、何かとトラブルを避けることが出来ます。
Q 公正証書遺言はそのまま開封して良いのでしょうか?

A 公正証書遺言は家裁の検認手続を経る必要はありませんから開封しても問題ありま

  せん。 

Q   被成年後見人や被保佐人は遺言をすることが出来ますか?

A  被成年後見人が一時判断能力を回復したときに、2人以上の医師が立会い、医師が

  遺言者の遺言時に判断能力に問題が無かったことを付記して、署名捺印すれば、

  作成できます。 しかし、現実には、このような厳しいハードルがあるので、被

  後見人が遺言することは、なかなか難しいです。

  被保佐人の場合は、遺言をすることについて、制限ありませんので、自由に遺言

  することが出来ます。

Q 目の不自由な人は、証人になれますか?

A 盲人は証人適格者です。(最高裁判例昭和55年12月4日)

 

公正証書遺言作成手数料(公証役場の手数料)

公正証書遺言の作成費用は、手数料令という政令で法定されています。ここに、その概要を述べますと、まず、遺言の目的たる財産の価額に対応する形で、その手数料が、下記のとおり定められています。 遺言の目的たる財産の価格とは、不動産の場合、相続税を計算する場合の不動産の価格である路線価や固定資産税評価額を参考にして、公証人が算定しています。 遺言を遺言者の病床で作成した場合の手数料は、下記の表の金額の1.5倍になります。 遺言の目的の価格が1億円以下の場合は、これに11,000円が加算されます。

 

 (目的財産の価額)   (手数料の額)
   100万円まで       5000円
   200万円まで       7000円
   500万円まで      11000円
   1000万円まで      17000円
   3000万円まで        23000円
   5000万円まで        29000円
     1億円まで        43000円
 1億円を超える部分については
 1億円を超え3億円まで 5000万円毎に 1万3000円
 3億円を超え10億円まで 5000万円毎に 1万1000円
 10億円を超える部分については 5000万円毎に 8000円
 がそれぞれ加算されます。 上記の基準を前提に、具体的に手数料を算出するには、下記の点に留意が必要です。

①財産の相続又は遺贈を受ける人ごとにその財産の価額を算出し、これを上記基表に当てはめて、その価額に対応する手数料額を求め、これらの手数料額を合算して、当該遺言書全体の手数料を算出します。 

②遺言加算といって、全体の財産が1億円以下のときは、上記①によって算出された手数料額に、1万1000円が加算されます。 さらに、遺言書は、通常、原本、正本、謄本を各1部作成し、原本は法律に基づき役場で保管し、正本と謄本は遺言 者に交付しますが、原本についてはその枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書の証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円の手数料が加算され、また、正本と謄本の交付にも1枚につき250円の割合の手数料が必要となります。

 

公正証書遺言記載例

平成○○年第○○号
      遺 言 公 正 証 書

遺言者 住所   横浜市中区本牧三之谷16-23
     氏名   行政太郎   昭和26年2月1日生
 右は印鑑証明書の提出により人違いでないことを証明させた。
  横浜市中区区○○町○丁目○○番地
   証   人 行政書士○〇○〇
         昭和○○年○月○○日生
  横浜市中区区○○町○丁目○○番地
   証   人 行政書士○○○○
         昭和○○年○月○○日生
 本公証人は、遺言者本牧太郎の嘱託により、証人○○○○、証人○○○○の立会をもって、次のとおり遺言の趣旨の口授を筆記し、この証書を作成する。

 遺言者は左記の財産を遺言者の妻行政花子(昭和○○年○月○○日生、以下「妻花子」という)に相続させる。
             記
 1 土地  横浜市中区本牧三之谷16-23     
 2 建物  横浜市中区本牧三之谷16-23所在
       家屋番号 ○○○○号
       木造瓦葺二階建居宅
       床面積  一階    △△平方メートル
            二階    △△平方メートル
第二条

 遺言者は遺言者の長男行政一郎(昭和○○年○月○○日生、以下「長男一郎」という)及び遺言者の二男行政二郎(昭和○○年○月○○日生、以下「二男二郎」という)に、現金及び預貯金を、それぞれ1000万円あて相続させる。
第三条
 遺言者は第一条ないし第二条に記載した以外の遺言者の一切の財産を妻花子に相続させる。
第四条
 妻花子が遺言者より先、または同時に死亡したときは、第一条及び第三条の財産は長男一郎及び二男二郎に各二分の一の割合で相続させる。
第五条
 遺言者はこの遺言の遺言執行者に妻花子(前条の場合は長男一郎)を指定し、遺言執行者に対し、遺言者名義の預貯金の名義変更、払戻、解約など、この遺言の執行に必要な一切の権限を授与する。
 遺言執行者はその権限を弁護士、税理士、司法書士、行政書士に委任することができる。

 上記のとおり遺言者及び証人に読み聞かせたところ、各自この筆記の正確なことを承認し、署名押印した。
                       行 政 太 郎 印
                       ○ ○ ○ ○ 印
                       ○ ○ ○ ○ 印
 この証書は、平成○○年○月○○日、本公証人が横浜市中区不老町1-2-1の本公証人役場において民法第九六九条第一号ないし第四号所定の方式に従って作成し、同条第五号に基づいて次に署名する。
  横浜市中区不老町1-2-1
      東京法務局所属
      公証人           ○ ○ ○ ○ 印

公正証書遺言判例

①公正証書遺の無効確認訴訟(東京地裁判 平成20年7月30日)
  本件は、平成18年6月16日に死亡した被相続人の相続人である原告が、東京法務局

 所属公証人A作成の平成18年第1192号遺言公正証書による被相続人の遺言は、被相

 続人が作成当時遺言能力を失っていたこと又は民法969条所定の要件を欠くことか

 ら無効であると主張して、共同相続人である被告らとの間で、本件公正証書が無効

 であることの確認を求めた事案である。  争点の一つが、被相続人の遺言能力(民

 法963)の有無でしたが、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし

 て、主文のとおり判決(公正証書遺言は有効)するとされました。

 

②遺言公正証書の作成時に遺言の証人となれない者が同席していた(最判平成13年3 

 月27日)

 遺言公正証書の作成にあたり、民法所定の証人が立ち会っている以上、遺言の証人 

 となることのできない者が同席していたとしても、この者によって、遺言の内容が

 左右されたり、遺言者が自己の真意に基づいて遺言することを妨げられたりするな

 どの特段の事情がないかぎり、遺言公正証書の作成手続を違法ということは
  できず、同遺言は無効ではない。

 

 

 

 

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